研究紀要第53号 「学習意欲を高める心理的治療への理論的アプローチ 第1年次」 -008/042page
とが考えられる。
(2) 家庭について
子供の人格は家庭を基盤として形成される。そこで問題となる家庭的要因は主に両親の養育態度,家庭の安定性,経済などが考えられる。
[1] 親の養育態度
表2 親の好ましくない育児態度と子供の性格
(ナカニシヤ出版 心理学より一部転用)
好ましくない親の態度 態度内容の説明 子どもの反応 親の態度の原因 拒否型 積極的拒否型
(罰,虐待,威嚇など)戸供に対する事情や態度に拒否的傾向がある場合
○子供への愛惰欠如
○援助拒否
○子供に対して無視
○表現の欠如1.注目索引
2.攻撃的,反抗的行動
3.安定感,忍耐力の欠如
4.孤立,逃避,劣等感などの消極的反応など1.経済的条件
2.共稼ぎ
3.期待はずれの子
4.家族間の葛藤
5.親の発達史の問題消極的拒否型(無視,置き去り,否定など) 過保護型保 干渉型
(世話やき,先回り)子供に対して心配、不安,恐怖を抱いている親は過保護によって解消しようとする。物事を冷静に合理的に処理する態度に欠け感情的行動をとりやすい。親は極度の過保護となって現われる。 1.自主性の欠如
2.集団生活の不適応
(引っ込み思案,孤独,責任感がうすいなど)1.子供の身体―精神の発達障害
2.家族構成の問題
(ひとりっ子,おばあちゃん子)
3.何年ぶりかで生まれた子,先に子どもを死なせた場合など不安型
(心配,取り越し苦労)1.フラストレーション耐忍度の欠如
2.不安感,情緒不安定
3.身体虚弱など過支配型 厳格型
(命令,禁止など)子供に村して過度の支配力をもつ親で,子供は親の所有物とみなし絶村の権力で統制しようとする態度。 1.ステレオタイフなパーソナリティ
2.自主性の欠如
3.他人の顔色をうかがう
4.反抗的など1.劣等感,虚栄心が強いなど,親のパーソナリティによる
2.親の不適応によりその補償を子供に求める
3.両親間のしつけの態度の不一致から
(片親が甘すぎる場合など)期待型
(親の野心投影,依存など)1.消極的反応
2.子供らしさの喪失
3.あせり,いらいら
4.成功感の欠如服従型 溺愛型
(盲愛,甘やかし)子供の要求や主張は何事であれ無条件で受け入れて満足している。
愛情過多,服従的奉仕によって満たされない事情を補っている。1.幼稚(幼児的な特徴)
2.自己統制が欠ける。1.家族関係で不適応な母親
2.配隅者を失った片親
3.子供の病弱
4.情緒不安定の親
5.親の発達史の問題盲従型
(子供のいいなり)1.自已中心的,抑制力不足
2.非協調性,性的発達
3.社会的技術―幼稚
4.忍耐力なく,無責任矛盾不一致型 矛盾型
(一貫性欠如など)一人の親が時と場合によりしつけや態度に矛盾をきたしたりまた両親の態度が一致しなかったりして子供は激しい混乱に陥しいれられる。 1.情緒不安定
2.反社会的行動など1.親のパーソナリティのゆがみ 不一致型
(家族間の態度の不一致)1.他人の顔色をうかがう
2.権力への盲従など1.両親の生活史の違い
2.夫婦関係の不和など表2に見られるように,好ましくない親の養育態度によって,不適応を起こしやすい性格が形成される。つまりこの親の養育態度が学習意欲を構成する8つの因子(自主的学習態度,達成志向の