研究紀要第53号 「学習意欲を高める心理的治療への理論的アプローチ 第1年次」 -009/042page

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態度,責任感,従順性,自己評価,失敗回避傾向,反持続性,反(学習)価値観を負の方向へ追いやる要因につながるものと考えられる。

次に考えられる要因としては,子供の学習に対する親の関心の程度である。無関心の場合,子供は学習に対しての張り合いがなくなり,学習意欲を失うことになる。しかし,教育過剰で子供に過大な要求をすることは,子供の不安やあせりを高めることになり好ましくない。つまり,子供の資質と能力に応じた教育と子供が勉強しやすいよう配慮することが必要である。

[2] 家庭の安定性

夫婦げんかが絶えなかったり,両規の養育態度に不一致が見られる場合や,親子関係,兄弟関係がうまくいかない場合は,絶えず緊張し,情緒的に不安定になる。このような場合,学習以外のことが気になり,学習意欲をそぐことになってしまう。

[3] 家庭の経済

勉強の設備や学用品などの問題が学習意欲を左右する場合がある。そのため学習意欲のなさの原因を経済的な面でだけでとらえることが往々にしてみられる。しかし,人間は環境に順応する力を持っているので,環境が悪いことが即学習意欲を失なわせる結果にはつながらない。同じ環境でも,気持ちの持ち方ひとつで大きく変わるものである。子供に対しては,その環境を積極的に活用するようにし向けることが大切である。

以上のことより,学習意欲を高めるため家庭で大事なことは,物質的環境を整えることよりもむしろ,あたたかい家庭の雰囲気や望ましい親子関係などといった子供にとって,より安定した心理的環境を整えることである。

(3) 学校について

学校が子供の学習意欲に及ぼす要因としては,教室の明るさ,施設設備など物質的要因と,生徒と生徒,生徒と教師との関係や,学級の雰囲気などの人間関係が考えられる。物質的要因を整備することは当然であるが早急に解決できない面もある。しかし,人間関係は努力によって解決できる面が多くある。

学校で仲間はずれにされたり,担任の先生との関係が良くない時などは,学習に対するとりくみも消極的になり,逃避したり,また,指導に対して従順性を示さなくなることが考えられる。

[1] 友達との関係

子供は亙いの接触を通して成長していくものである。友達の少ない子供はその生活経験が少ないため,物事の見方,考え方がひとりよがりになりがちである。そのため興味や関心の幅が狭くなり学習態度も悪くなることから学習意欲にも影響を与えるものと考えられる。また,友達との関係が悪い場合には,それが気がかりで学習に対しても集中できない。特に,自分自身の存在を意識する思春期においては友達との関係の良し悪しが学習意欲に大きく影響を与えるものと考えられる。

また,個人の学習意欲は集団全体の学習意欲からも影響をうける。従って,個々の学習意欲を把握すると同時に集団全体の学習意欲を知り,個々に対するアプローチと集団全体に対する働きかけを平行して行う必要がある。

[2] 教師との関係

教師が生徒を理解すれば,教師に対する生徒の態度も良くなることを認めている研究(ホイット 1955)からも,生徒と教師との関係を良くするには,まず教師側からの働きかけが必要と思われる。教師も感情を持った人間であるが,学校という場では子供が教師を選択することは許されない。また,教師が子供の学習意欲や人間形成に大きく影響を与えることからも,教師から子供との人間関係をより良くする努力が大切と考えられる。さらに,桝田登氏は,怠学と学業不振は作られていくもので,その原因の一つとして教師の拙劣さをあげていることからも教師側の影響力を十分に考慮し対処する必要があると思われる。

(4) 社会について

家庭,学校の諸問題はそれらをとりまく社会的背景をぬきにしては考えられない。そこで,家庭


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