研究紀要第53号 「学習意欲を高める心理的治療への理論的アプローチ 第1年次」 -011/042page

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必要である。

子どもの学習意欲をいかに高めるかという課題は,子供の人間形成に対してどのように働きかけるのが最善かということにつきることになる。

図5 学業不振の構造的とらえ方
図5 学業不振の構造的とらえ方

(6) 学習意欲と発達段階

学習意欲に影響を及ぼす要因は年齢を問わず全ての子供に共通しているものである。しかし,子供の発達段階において,その影響の強さ,また,学習意欲の有る無しのあらわれ方などは若干違ってくる。そのため,学習意欲を向上させる方法も発達段階に応じて工夫されなければならない。以下に小学生,中学生と大きく分けて考えてみたい。

観点 小学生 中学生
学習意欲の乏しい子ども像 学習生活 ・学習内容がわからない
・学力不足
・落ち着きがない
・集中力不足
・ぼんやり
・学習内容不消化
・学力不足
・落ち着きがない
・集中力不足
・忘れっぽい
学校生活 ・きまりを守れない
・無気力
・孤立
・集団不適応
・反抗的
・きまりを守る
・長期欠席
・無気力
・孤立
・集団不適応
・欠席,遅刻
日常生活 ・家庭での生活が乱れている
・劣等感がある
・家庭環境で意欲を失っている
・盛り場徘徊など非行・服装などの乱れ
学習意欲を阻害する主な要因 子ども自身の問題 ・知能が低い
・体力低下
・意志が弱い
・集中力がない
・根気がない
・あきやすい
・勉強の方法がわからない
・学習の習慣がない
・劣等感がある
・知能の遅れ
・体力がない
・意志が弱い
・集中力がない
・根気がない
・あきやすい
・勉強の方法がわからない
・学習の習慣がない
・劣等意識が強い
環境による原因 ・過保護と放任,過干渉
・愛情にうえた生活
・交友関係の問題
・大人の一方的おしつけ
・テレビ中心の情報過多
・過保護と放任,過干渉
・家庭が暗い
・交友関係に問題
・思春期特有の交友心理
・テレビ,マンガの影響・両規の生き方
指導面での問題 ・子どもの育て方に問題
・指導が粗雑
・個性に応じた配慮を欠く
・学習ステップが荒い
・特別児扱いをする
・せっかちな父母
・指導上の創意工夫不足
・個性に応じた指導が少ない
・問題児扱い
・内容が質的,量的に高い
・教科担任と合わない
学習意欲を高める指導方法 各教科等の学習指導の場で ・自信をもたせる
・成就感を味わわす
・認め,励ます
・助け合い学習
・基本的学習指導
・興味,関心をひきおこす
・発見を促す指導
・発問の工夫
・これならできそうだという教材選び
・自信をもたせる
・成功するうれしさを味わわす
・認め,励ます
・助け合い学習
・基礎学力の補充
・学習に対する関心を高める
・やさしい発問で活気づかせる
・質量を下げた課題教材を精選する
学級,その他学校生活の場で ・自信をつけさせる(心の安定)
・長所を認め,持ち味を伸ばす
・原因の診断と治療
・係活動を与える
・教師との接触を多くする
・交友関係を調整する
・カウンセリングの実施
・自信をつける指導(情緒の安定)
・長所を認め激励する
・学年,学級の協力
・原因の発見と治療
・人生を見つめさせる
・教師と生徒の人間的ふれ合い
・交友関係の調整
・係を与え励ます
・カウンセリングの実施
・性格を見つめさせる

以上のことから考えてみると,学年がすすむにつれ,自己主張が強くなり,さらに行動範囲も広くなることからくる問題点がみられる。また,思春期の特徴の一つとしてみられる心の動揺なども学習意欲を阻害しているように思われる。そこで,指導面でも,学年がすすむにつれて,自分を見つめさせる方向で対処する必要があると考えられる。


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