研究紀要第53号 「学習意欲を高める心理的治療への理論的アプローチ 第1年次」 -014/042page

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とする時には,眠くなってもがまんして勉強することが必要である。途中であきても,がまんして,最後までやりぬくことが必要である。勉強中に気がちることはないか,あきることはないか,テレビを見始めると,いつまでも見ているようなことはないか等についてみる。

(ウ) 「責任感」

やるべき学習を責任をもってやりとげようとする態度である。宿題や課題を忘れないようにするとか,グループ学習における自分の任務や分担をきちんと果たしているか等でみる。

(エ) 「従順性」

学習を進める上で,あるいは学力向上のために有効な他者からの援助や指示を受け入れる傾向があるかどうかで評価される。学習の誤りを指摘された時にすなおに自分の誤りを認めるかどうかとか,グループ学習の時に自分の意見と異なる場合にも相手の良い点を認めることができるかどうかとか,リーダーの指示に従って自分の役割を果たすかどうかとか,友達の意見をうけ入れようとするかどうか等でみる。

(オ) 「自己評価」

自分の学力や成績をどを自分なりに評価している。あるいは評価しようとしていること。これは自分の能力にあった目標をきめることができるかどうかとか,自分の答えを見なおして,自分の誤りをなおすことができるかどうかとか,学習してわかったこととわからないことが区別できるかどうか,課題を解決するために全力をあげてとり組んだか等でみる。

(カ) 「失敗回避傾向」

失敗を恐れるあまり,学習に集中できなかったり,学習場面から逃避しようとする消極的傾向である。答がわかっているのに挙手できないとか,先生から指名されても,自分の意見をはっきり言えなかったりしないかとか,テストに対して不安を強くいだくとかでみることができる。

(キ) 「反持続性」

勉強にあきやすかったり,遊びをやめて勉強にとりかかる決断がおそいこと。前述の達成志向の態度とも関連はあるが,学習場面で私語が多かったり,勉強と関係のないことを友達とやっていたり,手わすらをしたりしないかどうか等でみることができる。

(ク) 「反(学習)価値観」

学習の価値を認識し,学習へと自己を方向づける態度に欠けている傾向である。小学生では,何のために勉強するのかといった必要感について理解しにくいが,中学生になると将来を見通して学習の必要性を感じるようになる。何のために学習するのかとか,どんな学校に進学したいとか,将来への希望とか等でみることができる。

なお,観察にあたっては,表面に表われた行動だけでなく,心の中の動きにも注意を払う必要がある。また,次の点にも留意することが大切である。

[ア] 条件を考える。つまり子供の行動や態度がなぜ発生したのかを考えることである。例えば,授業中に手わすらをする子供がいた時に,あきてしまったのか,学習内容がやさしすぎるのか,学習が終わってしまったのか,もっと他の理由があるのか等を考えるべきである。手わすらイコール学習意欲がないと考えるべきではない。

[イ] 前後のつながりを考える。どんな行動にも原因と必然性があり,一連の流れがある。行動を見て,内面を推測する場合には,特に,この点を考えないと判断を誤ってしまう。それには子供の態度から前日の過ごし方や家庭生活に何か問題はなかったか,身体の具合はどうか等を観察したり,疑問な時には,本人とよく話し合うことも必要になる。

[ウ] のっぴきならない場面になった時の行動や態度を観察する。例えば「テストをするといわれると勉強する」「宿題を出されると勉強する」「しかられるとやる」等の時は,ある程度の学習意欲はあると判断できる等である。

[3] 面接法

学習意欲の程度について知ろうとしたり「学習意欲検査」の結果から各因子等について,更にくわしく知ろうとする場合に,ただ子供の行動を観察するだけでなく,直接本人に話しかけたり,質問したりして,本人の気持ちや考えを聞き出すのもよい方法である。なお面接して質問する時には子供が気楽に,そして正直に話せる雰囲気を作る


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