研究紀要第53号 「学習意欲を高める心理的治療への理論的アプローチ 第1年次」 -015/042page
ことが大事である。
(2) 学習意欲を失った子供の原因とその背景を調べるためのテスト・バッテリー
前述の手続きによって選出された学習意欲を失った子どもの原因とその背景をさぐり,指導仮説を立てるために図7のようなテストバッテリーを編成した。その場合に次の点に留意した。
[ア] 教育場面で利用できるように入手しやすく処理が容易をもの。
[イ] 必要かつ最少限な検査にとどめた。また,観察や面接の記録や学校での資料等,多面的に資料を求め,多面的・総合的に診断するように努めた。
なお,テスト・バッテリーの編成にあたっては福島県教育センター編集による「学級担任・H・R・Tのための学校教育相談入門」の23頁〜38頁を参考として利用した。
図7 テスト・バッテリーの編成
次に使用された心理テストの主なものについて簡単に記す。
・Y−G性格検査 適用範囲小学2年以上
ギルフォード(米国)の3種類の性格検査をもとに作られた質問紙形式の性格検査である。12の下位尺度で構成され,尺度毎に10個の質問項目があり,前半6尺度で情緒安定性を,後半6尺度で向性を示し,下位尺度の得点によるプロフィールによって性格類型を判断する。その性格類型から性格の判定をする。また得点及び各因子の関連から特徴的を性格特性をみる。
・問題性予測検査(DAT)適用範囲中学以上
問題傾向の早期発見,診断を目的として作成した質問紙検査で,潜在的問題を適応傾向,性格傾向,規範逸脱傾向,反社会的問題傾向に分けて明らかにしたものである。また,これらを総合した全体的な傾向から,問題傾向がどの程度の危険性をもつかという,危険性の度合いもわかる。
・不安傾向診断検査(GAT)適用小4年以上
本検査は,不安感情の向けられる対象と,不安によって生じる行動の面から,不安を測定しようとしている。測定する尺度として,学習不安傾向,対人不安傾向,孤独傾向,自罰傾向,過敏傾向,身体的徴候,恐怖傾向,衝動傾向がある。尺度の結果は偏差値を用いたダイア・グラフによって図示される。
・CMI健康調査表 適用範囲14歳以上
神経症の簡単なスクリーニングを目指す質問紙法の心理テストである。身体的自覚症についての質問と精神的自覚症についての質問からなり,現在の自覚症のほかに既往歴,家族歴も含まれる。
結果から神経症判別図に記入され4領域のいずれに位置するかによって神経症の有無が判別される。・親子関係診断検査〈田研式〉適用小4年以上
子供の個性や行動を理解するために家庭における人間関係を科学的・客観的に診断する目的で作成されている。
質問に対する解答をもとにダイヤグラフを作成