研究紀要第53号 「学習意欲を高める心理的治療への理論的アプローチ 第1年次」 -020/042page
表6 因子別による得点平均(M)と標準偏差(S.D)
男子(n=19) 女子(n=15) 学級全体(n=34)
\ 平均・偏差値 因子名 \ M S.D M S.D M S.D 自主的学習態度 9.6 3.3 13.2 2.9 11.2 3.6 達成志向の態度 11.9 3.9 14.4 2.6 13.0 3.6 責任感 12.8 3.6 15.1 3.2 13.8 3.6 従順性 10.4 3.0 16.1 2.2 12.9 3.9 自己評価 12.2 3.4 14.3 3.2 13.1 3.5 失敗回避傾向 15.5 3.2 14.0 3.0 14.8 3.2 反持続性 10.7 4.8 12.7 3.5 11.6 4.4 反(学習)価値観 11.6 4.7 14.3 4.6 12.8 4.8 P得点 56.9 14.2 75.9 14.7 65.3 17.2 N得点 37.8 9.0 41.0 8.9 39.2 9.1 T得点 94.7 21.2 116.9 16.3 104.5 22.1 〈結果と考察〉
ア. この学級は全体の平均が104.5点で,標準偏差が22.1である。これは4段階点に位置し,学習意欲が強い方であるが,ややまとまりが欠けていると思われる。
イ. P得点とN得点を比べると,P得点は65.3点で3段階点であり,N得点は39.2点で3段階で差はない。
ウ. 男女差についてT得点でみると,男子94.7点で2段階点,女子116.9点で4段階点を示しており,男女差が著しく,女子の方が学習意欲が高いと思われる。
エ. 男子のP得点56.9点(段階点2)とN得点37.8点(段階点3)及びT得点94.7点(段階点2)から考えると,男子は積極的側面より消極的側面が強い。
オ. 女子のP得点75.9点(段階点4)とN得点41.O点(段階点3)及び丁得点116.9点(段階点4)から学習意欲はやや高い方であり,積極的側面をあらわす上位5因子は,男子にくらべてすべてが優位である。
カ. 因子別に問題をもつ児童を(得点平均−標準偏差)以下の得点の者として男女別でみた場合,つぎのとおりである。
因子名 男子
M−SD値人数 女子
M−SD値人数 ・自主的学習態度(学習にとりくむ態度) 6.3 6 10.3 2 ・達成志向の態度(学習を追求する態度) 8.0 2 11.8 2 ・責任感(学習を追求する態度) 9.2 4 11.9 2 ・従順性(学習への心的傾向) 7.4 3 13.9 1 ・自己評価(学習にとりくむ態度) 8.8 4 11.1 2 ・失敗回避傾向(学習にとりくむ態度) 12.3 3 11.0 1 ・反持続性(学習を追求する態度) 5.9 5 9.2 1 ・反(学習)価値観(学習への目的意識) 6.9 6 9.7 2
以上の結果から問題をもつ児童が5名以上の因子には問題あり因子としてみると,男子には「自主的学習態度」「反持続性」「反(学習)価値観」に問題をもつ児童が多くみられたが,女子にはみあたらなかった。
これを前述の学習意欲構造図からみると,自主的学習態度は学習にとりくむ態度であり,反持続性は,学習を追求する態度であり,反(学習)価値観は学習への目的意識である。つまり,当学級の男子は,自分の課題をきちんととらえたり,目的意識をもって,問題解決のために自主的,計画的に最後までやりぬこうとする意欲に欠けていると考えられる。
キ. 8因子間での男女の特徴あるものをみると,男子は自己評価と失敗回避傾向が高い段階点(3点)