研究紀要第53号 「学習意欲を高める心理的治療への理論的アプローチ 第1年次」 -032/042page

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外的動機づけは,親や教師が賞罰や競争,その他によって外から与える刺激で学習意欲を引き起こす方法である。この方法は,簡単でしかも親や教師の意図する方向に向けやすいのでよく用いられるが,学習者に学習を強制したり,個性を無視したりしがちなので十分に配慮して用いなければならない。

大きく分けて,2つの動機づけの方法を述べたが,教育的にみれば内的動機づけの方が望ましい。しかし,両方とも長所短所を持っているので,どちらの方法を用いるにしても,学習者の発達段階,能力,性格,家庭環境,学級の雰囲気などを考慮して学習者に最も適当と思われる方法を用いる必要がある。

それでは,どのような点を考慮して動機づけをしたらよいかをあげてみる。


1) 外的動機づけを行う場合は,内的動機づけに発展するような仕方で行うことである。はじめ,学習者に学習する喜びがなくても,行わせることによってしだいに喜びを感じて学習するようになり,目的や目標もかわってくる。このような状態になったとき内的動機づけに発展したといえる。

2) 内的動機づけは,継続的でしかも発展的なものでなければならない。学習の進行にあわせ,フィードバックさせながら動機づけを適切に行うことによって,内的動機づけは,ラセン状に発展していくことになる。

3) 内的,外的動機づけも,動機づけの強さが,弱すぎても強すぎても,学習能率は上がらないので,適度にする必要がある。
強い動機づけは,やさしい課題の学習には良い影響を及ばすが,むずかしい課題には必ずしも良い影響を及ぼさない。
また,弱い賞罰の動機づけをした場合,賞罰に鈍感な子供は,賞罰によって心をかきたてられるものがあまり起きてこないため効果が少なく,学習能率も低い。

(2) 8 因子を高める動機づけ

学習意欲を構成する8因子を高めるための動機づけは,いろいろあるが本研究では,辰野氏の説によって9つの方法をとり上げてみた。以下図10で示したような順で述べていくことにする。

1) 自主的学習態度に関係ある動機づけには,興味を育てる動機づけ,知的好奇心を育てる動機づけ,目的目標を決めさせる動機づけがある。


○興味を育てる動機づけ
 ・快の経験をさせる。
 ・知識を与えてやる。
 ・技能を伸ばしてやる。
 ・積極的態度を持たせる。
 ・能力に応じた機会を与える。
 ・興味を持たせるような生活態度を示してやる。

○知的好奇心を育てる動機づけ
 ・驚きを与える。
 ・疑問を与える。
 ・葛藤を生じさせる。
 ・矛盾を引き起こさせる。

○目的目標をきめさせる動機づけ
 ・目的目標を具体的に示す。
 ・段階ごとに目的目標を決めさせる。
 ・実行できる目的目標にさせる。

2) 達成志向に関係ある動機づけには,興味を育てる動機づけ,目的目標を決めさせる動機づけ,成功感に訴える動機づけ,達成動機に訴える動機づけがある。
ここでは,成功感に訴える動機づけと達成動機に訴える動機づけについて述べることにする。


○成功感に訴える動機づけ
 ・成功したときの経験を生かすようにさせる。
 ・努力の結果であることをわからせる。

○達成動機に訴える動機づけ
 ・目標へ向っての進歩を記録させる。


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