研究紀要第53号 「学習意欲を高める心理的治療への理論的アプローチ 第1年次」 -033/042page

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・新しい目標をたてやすいようにさせる。
・困難な作業やむずかしい課題に対してもすてないで最後までとりくみ,やりとげることができるような気力をつけさせる。

3) 責任感に関係ある動機づけには,目的目標を決めさせる動機づけ,達成動機に訴える動機づけがある。
方法については,前述に同じである。

4) 従順性に関係ある動機づけには,成功感に訴える動機づけと不安動機を生かす動機づけがある。
成功感に訴える動機づけは,前述の通りなので不安動機を生かす動機づけについて述べることにする。


○不安動機を生かす動機づけ
 ・テスト不安を適度に与える。

5) 自已評価に関係ある動機づけには,学習結果を生かす動機づけ,賞罰を与える動機づけがある。


○学習結果を生かす動機づけ
 ・結果から自己評価をさせる。
 ・結果について短評を加える。
 ・結果については,なるべく励ますようにする。

○賞罰を与える動機づけ
 ・言葉による賞罰を与える。
 ・物による賞罰を与える。

6) 失敗回避に関係ある動機づけには,不安動機を生かす動機づけ,賞罰を与える動機づけがある。
方法については,前述の通りである。

7) 反持続性に関係ある動機づけには,知的好奇心を育てる動機づけ,目的目標を決めさせる動機づけ,競争をさせる動機づけがある。
ここでは,競争をさせる動機づけについてだけ述べることにする。
他の方法については,前述の通りである。


○競争をさせる動機づけ
 ・自分の記録を破るようにさせる。
 ・能力の範囲で競争相手を決めさせる。

8) 反(学習)価値観に関係ある動機づけには,興味を育てる動機づけ,目的目標を決めさせる動機づけがある。
方法については,前述の通りである。

(3) 学習意欲を高める心理療法

前項では,学習意欲を高めるための動機づけとその方法について述べてきたが,児童生徒に学習意欲が高まらない原因に心理的な背景があることを考えると,心理面で動機づけを強化,補助するのと同時に心理的な治療が必要であると言える。

そこでここでは,学校現場で使用でき,しかも効果があると思われる主な心理療法を5つにしぼって述べることにする。

[1] カウンセリング

ロージャスのいう「クライエント中心主義」の立場から,カウンセリングとは,適応上の問題をもち,その解決に悩んでいる人のために,言語的手段を用いて心理的影響を与えて問題解決を助ける過程といえる。

つまり,学習意欲を失った原因やその背景となっている問題に自分で気づき,自分で解決していくように指導援助していくことである。

カウンセリングが進むにつれて,子供は,次々と問題点に気づき自分で解決していく中で,やればできるという自信と,自主的な生活態度が育ってくる。問題点をみつめ,自分で解決しようと努力した体験から,自分の将来や進路等について,自分の希望が明確となり,不安にたえて努力しようとする態度も育ってくる。そして,自分に自信をとりもどすとともに,学級集団の中での人間関係も改善されていくことになる。このような状態にあるとき,前述の動機づけが有効に働き,学習意欲が高まるものと考える。

カウンセリングと主に関係する動機づけは,図10の通りであり,それに関係する8因子,要因を結びつけて考えるように明示してあるので以下も同様に参照されたい。

[2] 行動療法


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