研究紀要第53号 「学習意欲を高める心理的治療への理論的アプローチ 第1年次」 -035/042page

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また,観衆は,演者と一体になり,自分が演じたらどうなるかという立場で参加する必要がある。その際の観衆の発言は,感想の表現に限定し,観衆自身の態度も演者と同様に変容していく必要がある。

役割を演じたり,観ることによって,自分自身を変えていく。従って学習場面とか人間関係とか演者がどうしたらよいのかわからない場面を具体的に設定し,その中で自分が納得いくまで演じてそこで得たものを現実生活に反映させていくのである。

[4] 読書療法

人格や行動などの問題に対して適切な治療的価値を持った読み物を与え,それを読ませることによって生じる読書の効果を矯正や治療に当てる療法である。

次に方法について述べることにする。

1)読書の動機づけ


興味本位の読み物を与え,そのうち治療的な課題読書に移行する。
図書選択に喜びを与える。
年齢に相応した本や長編のものはさける。
物語の筋や主人公の性格,行動などを説明して興味を誘発する。
面接と読書をうまくとりまぜながら行う。その際,称賛と激励を忘れないこと。

2)読書のさせ方


読む本はこちらで与えるようにし,その中から選択させるようにする。
読書に要する時間は,だいたい20分ぐらいにする。
読むときは,静かに,心を落ちつけ文章の中にこもっている意味をかみしめて読むようにさせる。
本を読んだらすぐ感想を書かせる。書く内容は,あらすじでなく,自分の思ったこと,感じたことを正直にかくようにさせる。感想文は,だいたい10分くらいで書けるものとする。
面接のとき.本と感想文を忘れず持ってこさせる。

3) 読書療法と効果


使いやすく治療される方にも抵抗感がないうちに,内面にふれることができる。
今までの言動を修正し,やる気がでる。

以上述べてきたが,まとめてみると,
読書療法をしていくうちに,はじめは,自分自身や自分の行動をみつめていくが,しだいに,自分の心の内に興味や関心が強まり,行動には,目的目標をたててやる気がでてくる。

さらに,段階が進むと,行動や心がまえが変化し,成功感も味わうことができるようになる。このような状態になることが学習意欲を高めることにつながるのである。

[5] 自律訓練法

心身両面にわたる自己コントロール法である。暗示公式と呼ばれる一連の体系化された言語暗示刺激を自分自身で反復し,段階的な心身の改善を図る療法である。

自律訓練法は,ドイツの精神科医,シュルツが創案したもので,自己暗示の効果を根本にした自己催眠的技法であり,広く医学,心理学,教育学に利用されている。

自律訓練法の特にねらうところは,身体的な緊張を緩和させることにより,心理的,生理的な変化をつくり出し,人間有機体の再体制化を得るところにある。学習意欲を高める場合の利用法について簡単に述べる。まず,人前であがったり,ドキドキして発表しにくいとか,他人の視線が気になる場合等があるが,その場合には,標準練習+系統的脱感作法を用いる。また,集中力を身につけるのにも効果があり,標準練習+メンタルリハーサルを用いる。試合の時に力は十分あるのに,神経質ですぐ不安になり,もてる力の半分も出せないというような場合に「観客の存在や他の選手とのかけひきは気にならない。自分のぺ一スでやる」と自己暗示をしたり,試合場面をイメージ化して何回も練習すると,実際の試合で能力が発揮できるようになる等である。

自律訓練法の仕方を,簡単に述べてみることに


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