研究紀要第53号 「学習意欲を高める心理的治療への理論的アプローチ 第1年次」 -036/042page

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する。

1)自律訓練法の準備

○訓練時の心がまえ

公式の示す身体部位に気持ちを向け,公式を念頭におきながら,公式の示す状態を自然に感じられるように練習する。

○訓練回数と時間

1日に3セッション(朝,昼,夜)練習をし,毎日続けることである。1セッションとは,一連の訓練公式を行ったあと解除動作をするまでのことである。

○解除動作

訓練公式を繰り返して練習していくが,1回の練習が終わったところで腕の屈伸運動を10回ほど行い,そのあとで背伸びを2回ほどして目を開ける。

2)自律訓練法の進め方

標準練習の場合のみについて,
 ○背景公式(安静公式)
  ・気持ちが大変落ちついている。
 ○第1公式
  ・両腕,両脚が重たい。
 ○第2公式
  ・両腕,両脚が温かい。
 ○第3公式
  ・心臓が穏やかに規則正しく打っている。
 ○第4公式
  ・呼吸が楽だ。
 ○第5公式
  ・お腹が温かい。
 ○第6公式
  ・額が涼しい。

これらの公式練習を一連の言葉として,約30秒ぐらい間をおいて何回もくり返して言う。そして,最後には必ず解除動作をするようにする。

自律訓練法をしていくと,まず,心身のリラックス状態がつくられていく。さらに進むと,強化方式によって,現在の状態をのり越えていく力がつくことになる。つまり学習やテストに対する不安感が強い場合等に,まず心身のリラックス状態を作って,その不安感に耐える力をつけ,強化公式「やればできる」「学習はたのしい」等を心の深い部分に訴えることによって意欲を強める。

[6] その他の心理療法

前項では学校場面で利用できて,しかも有効と思われる心理療法を5種類紹介したが,ここでは,当教育相談部で利用している心理療法の中から,学習意欲を失った子供に効果的と思われるものを紹介する。

1)催眠療法

神経症,行動異常,異常習癖者などに対する治療法として発展してきた。しかし,催眠療法で治療したというよりも,他の心理療法を実施しながら,症状,原因,背景などにより,催眠療法が特に有効な場合に並行して実施するといった用い方が多い。学習習慣や学習態度に問題があり,学習意欲を失っている子供に対しては,親子関係,学校,社会環境などの人間関係の調整などに相当の期間を要することが多い。催眠療法によって比較的短時日に習癖が除去されたり,治療期間が短かくなる等の効果がある。

催眠深度による適用方法の概略をウェルベルグの段階によって説明する。

○前催眠,軽催眠状態における療法

A 保証

学習場面での不安や恐怖について,自信を与え,誤解をとくため理解を示しながら,真の原因に目を向けさせる。

B 説得

学習目標の確立,学習に対する意欲の増進,悪癖習慣からの脱出,情動の統制,緊張の除去,自信の付与のための方向付けをする。

C 再教育

問題の原因を自覚させ,洞察させながら,現存する条件や環境をうまく調和し,学習成立のための目標設定や態度を形成させる積極的な指示や忠告を与える。

D カタルシス

自由連想を用いて、学習意欲を失った原


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