研究紀要第53号 「学習意欲を高める心理的治療への理論的アプローチ 第1年次」 -037/042page

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因を無意識の世界に追求し,治療する方法や空想を誘導し,欲求・かっとうの意味を洞察させる。

○中等度催眠状態での療法

A 自己催眠

この段階では,自己暗示による催眠法を習得させうる。自分で自由に繰り返して行い得るので,自信を与えるとともに操作者への依頼,依存が除かれる。後催眠暗示として「あなた自身が○○○○を思い浮かべると,今と同じような催眠に入ってゆけます」「催眠中でも別な○○という合図で覚せいします」「さめたあとは気持ちがゆったりしている」等の暗示が与えられる。

B 夢の誘導

催眠状態では容易に夢をみせることができるので,催眠中にみた夢を分析する方法がつかえる。

○深い催眠状態での療法

A 症状・習癖の除去

権威暗示による症状除去は,軽催眠・中等度催眠で実施できるものもあるが,深層心理での原因解明には深い催眠状態で実施する方がよいとされている。

B 脱感作療法

過去のいやな記憶,憎しみ,外傷体験,劣等感など本人にとって苦痛な問題に少しずつ直面させ,漸次に慣れさせ,それを受け入れるだけの強さを作り上げる。催眠中に抑圧された記憶,かっ藤を直視させて対応させるわけで,テスト場面に緊張・不安が高く,充分に能力を発揮できない場合に催眠中にテスト場面に慣れさせる方法などである。

○夢遊様の催眠状態での療法

A 再条件づけ

恐怖の原因や劣等感の因となったものを受入可能な習慣,態度に置き換える暗示を与える。

B 催眠分析

精神分析理論や技術に習熟した後に試みられるべき方法である。

2)遊戯療法

遊戯療法(p1ay therapy)とは,遊戯を治療手段の中心においた心理療法である。この療法が,特に3,4歳から11,12歳までの子供に効果をもたらすといわれるのは,次のような子供の遊びの特質による。


子供の遊びが,本来,楽しみと満足とをともなう活動であり,それ自体が目的であって他の動機づけを必要としない点である。
子供の遊びが,体験,感情,忠考,意志を表現する言語である。つまり,生活経験,要求,願望などが遊びという言葉で描き出されるのである。
子供の遊びそれ自体が生活適応の方法である。遊びの中では,子供は思うままに自分を主張し表現できるので,日常生活での不安や欲求不満が解消されるのである。

遊戯療法は,他の心理僚法と同様に,心因性の適応異常に対して用いられるが,攻撃衝動型の子供,神経質な子供,引っ込み思案の子供,退行的な行動に固着している子供などに適用すると効果的である。次に遊戯療法の種類についてのべる。

A 個人自由遊戯法

子供一人だけを対象にして,種々の遊具を自由に選ばせ,好きなように遊ばせる方法である。遊戯療法の中では最も基本的な技法で一般的に広く用いられる。

B 人形遊び

この方法は,レヴイが兄弟間の争いを研究するために開発したものであるが,現在では児童理解の投影法としても利用されている。遊具としてはカタルシスを促進するためにも,子供の家族構成に似せた人形やそれにみあうような家具類も用意する。

C フィンガーペイント遊び

指絵遊びには,子供の空想的表現を促進させる機能があるので,人形遊びと同様に,一種の投影法として利用できる。


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