研究紀要第56号 「学習指導と評価に関する研究 第1年次・実態調査」 -009/053page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

(6) 授業前の評価についてのまとめ

1.「指導計画への評価の位置づけ」との関連について
 授業前の評価 [設問 2] と指導計画への評価の観点の位置づけ [設問 1−(1)] との関連を,中学校についてみると次のような結果になる。評価の方法の位置づけ [設問 1−(2)] との関連についてもほとんど同じ結果になっている。

      1−(1)評価の観点の位置づけ

2 授業前の評価

ア 具体的に位置づけている イ 具体的ではないが位置づけている ウ 位置づけていない 合計
ア いつも行っている 13人 16人 3人 32人
イ 行っていることが多い 33 91 11 135
ウ 行っていることが少ない 29 104 17 150
エ ほとんど行っていない 5 27 11 43
合   計 80 238 42 360

 評価の観点を「具体的に位置づけている」「具体的ではないが位置づけている」を合わせると318人で,全体の88%を占める。しかし,そのうち半数以上の165人(52%)が,授業前の評価を「行っていることが少ない」「ほとんど行っていない」と答えており,指導計画の中に評価の観点を位置づけていることは多いが,それに比べて授業前の評価を行っているのは少ないようである。このような結果になっているのは,指導計画に位置づけた評価を行っていないということではなく,その評価内容が授業中や授業後についてのものが主で,授業前の評価まで指導計画に位置づけているのは少ないためであると思われる。時間的に余裕のないことなどもあり,授業中や授業後の評価に比べて授業前の評価がやや軽視されがちであるが.評価の内容を重点的なものに絞るなどして,評価の機会をできるだけ多くもてるようにすることが大切であると考える。

2.授業前の評価の方法・資料について
 評価の方法・資料として多く用いられているのは,「観察法」「レディネステスト」「既習の単元・題材の総括的評価」の三つである。中でも「観察法」は小・中・高等学校いずれにおいてもほぼ60%になっている。この観察法については,経験や勘によることも大切であるが,更に,観察の視点を具体化したりチェックリストを作成するなどして,できるだけ客観的に観察できるようにしておくことも必要であろう。
 小・中学校では標準学カ検査を実施しているところも多いが, [設問 3] の調査結果を見る限りでは,これを授業前の評価資料として活用しているのはわずかのようである。学力検査の結果を基につまずきや陥没点を把握し,そのための補充指導をどうするかなど,授業前の評価資料の一つとしてもっと積極的に活用できるのではないだろうか。

3.授業前の評価後の補充について
 評価後の補充を行っているのは全体の95%であり,そのうちの約75%の多くは「授業の中でそのつど補充している」と答えている。したがって,授業を進めるにあたって,どこで,どのような内容について,どの程度の時間を補充指導にあてるのかを考えて指導計画を作成したり,児童生徒のつまずきや陥没点を的確に把握するなどして,意図的計画的な補充指導ができるようにしておくことが必要であろう。また,その指導法についても工夫・改善していくことが大切であると思われる。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。