研究紀要第56号 「学習指導と評価に関する研究 第1年次・実態調査」 -016/053page

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(7) 授業中の評価についてのまとめ

1.授業中の評価の実施・方法について
 児童生徒が,目標に到達しているかどうかを確かめながら授業を行った径験を有する教師は99%に達している。これは,教師が指導と評価の一体性を認識して授業を行っていることを示している結果であると思われる。しかし,授業中の評価を計画的に行っている教師は14%にとどまっている。教師が,児童生徒一人一人について,あらゆる授業場面を予測して指導計画や評価計画を作成することは,大変難かしいことであるが,指導計画と一体となった評価を行うためには.評価の計画性が必要となろう。評価を計画的に行うことにより,児童生徒一人一人について目標到達の実態を把握し,適切な指導を行うことが可能になるものと思われる。
 授業中の評価の方法は,「ぺーパーテスト」「観察」「発言・発表」が多用されているが,今後は評価計画に即した方法を工夫していくことも必要であろう。
 現時点で教師が行っている授業中の評価は,手統き,方法の是非は別にして,指導と評価が一体となる評価観に基づいて実施されているといえよう。今後は実践の積み重ねにより,適切な手続きや方法が確立されるものと思われる。

2.治療指導について
 授業中に児童生徒が目標に到達できずにいる場合に,「その場で指導している」経験を有する教師は,98%に達しており,[設問 9] において最も高い割合を示している。このことは,指導と評価が一体となる評価観に基づいて,授業を行っている教師の実態としてとらえることができよう。一方,「その後の授業で指導している」「休み時間などで指導している」割合も,それぞれ79%,66%もあり,目標に到達させることが授業中だけでは困難であることがうかがえる。したがって,授業中に児童生徒が成功感や充足感を味わわせるために必要な,目標到達を経験させるためには,治療指導の資料に基づいて,教材の精選に関する配慮や到達目標の設定に関する配慮なども必要となろう。

3.自己評価について
 授業中に自己評価の場をとり入れて指導を行った経験を有する教師は91%であり,児童生徒に自らの理解度やつまずきを把握させながら授業を行い,学習者自身のフィードバック機能を生かしている教師の多い実態がうかがえる。学習者自身による評価は,自発的・自律的であるので,極めて効果的な方法であるといえる。しかし,児童生徒の発達段階によっては,教師の明確な意図や方向づけがないと適切な評価を行い難い一面があるので,評価の範囲や観点を明確にしておくなどの配慮が大切であろう。
 自己評価を行わせている方法は,「ぺーパーテストの自己採点など」53%,「力ード(チェックリスト)などの記入」22%,「反省文(記録)を書かせる」19%である。効果的な自己評価を行わせるためには,例えば,「力ード」や「チェックリスト」の工夫や活用,感想文や反省文を書かせる場合の,文章表現と評価観点の関連づけの工夫などが必要となろう。
 [設問 6] と[設問 10] の関連を中学校についてみるかぎり,目己評価を「いつも行っている」か「行っていることが多い」教師は,授業中の評価で「いつも確かめている」か「確かめていることが多い」に94%が該当している。このことは,自己評価を行わせることの多い教師は,授業中の評価を行っていることが多いことを示しているといえよう。


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