研究紀要第57号 「学習意欲を高める心理的治療の実践研究 第2年次」 -003/044page
3.学習意欲が形成される背景
学習意欲に影響する要因としては,まず,本人自身の問題としての内的要因と,それに影響を与える外的要因としての環境,さらにそれらの相互的な反応が考えられる。
ア.内的要因
本人自身の問題であり,身体状況,健康度,知能・性格・習憤・学習方法・学習態度・基礎学力などが考えられる。
身体的な問題が児童生徒に劣等感を持たせ,学習意欲を失わせる結果になりやすい。また,知能や学力を十分見きわめた指導が要求される。
更に,児童生徒の性格を考えると,情緒面での安定性・社会的適応性・内省的な面が学業と深いかかわりを持つと見られる。性格は学業だけでなく,人間関係を作るうえでも重要な意味を持っている。児童生徒一人一人の性格を知り,性格を望ましい方向へ変えるアプローチが,学習意欲の向上に役立つと思われる。
学習方法・態度・習慣は学習効果と密接な関係にあると言われている。学習方法のつまずきなどが,学習不振をひきおこし,それが原因でさらに学習意欲が落ちるといわれている。イ.外的要因
本人自身の問題と同様に,学習意欲に大きくかかわるものとして,家庭,学校,社会などの環境の問題がクローズアップされる。
まず,家庭について考えてみると,両親の養育態度,家庭の安定性,経済状態があげられる。親が子供に対してどのような関心を示すかが,子供の学習に対する取り組みの態度を左右すると考えられる。親がしっかりと子供の資質や能力をとらえ,その子供に応じた教育を行うことが,子供の学習意欲を高めることになるといわれる。また,夫婦間の問題や親子・兄弟間の緊張した関係は子供の情緒不安定の原因ともなり,学習意欲をそぐことにつながっていくと考えられている。
子供にとって家庭の物質的な環境も大切であるが,むしろあたたかい家庭の雰囲気が安定した心理状態を生み,学習意欲も向上すると考えられる。
次に,学校生活での対友人・対教師の関係があげられる。学校で仲間はずれにされたり,教師との人間関係がよくいかない不安が学習に対する取り組みを消極的にし,指導を素直に受け入れないばかりか,反抗心をもいだく結果になりかねない。4.学習意欲に問題を持つ児童生徒の選択
ア.心理的治徽寸象児童生徒抽出のための流れ図(図3)によっで対象児童生徒を抽出する。
まず,学習意欲検査用紙を使用し,児童生徒による自己評価と学級担任による他者評価を実施する。(学習意欲検査用紙は10〜11ぺ一ジ参照)
学習意欲検査の結果をもとに,学習意欲に問題を持つ児童生徒として次の者を選ぶ。
(ア)T得点(全因子の合計点)が低い児童生徒(これは,学習意欲が全体的に乏しいと考えられる。)
(イ)各因子の得点の差が著しい児童生徒