研究紀要第57号 「学習意欲を高める心理的治療の実践研究 第2年次」 -012/044page

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3. 研究の実際とその考察

(1) 抽出児生徒の事例

T 得 点 が 低 い 児 童

事例1 小学6年A児(男子)

1.学習意欲検査からみた児像

学習意欲検査からみた児童像

(1) 自己評価で見ると進んで学習することは少ないが,教師などからの援助や指示を素直に受け入れようとしている。
 また,問題解決場面などでは注意持続性に欠け,最後までやりとおしたりすることが少ない。

(2) 教師の評価では子供の評価より全体的に低い。T得点の段階点で1であり,学習への積極的な取り組みの態度や目標達成への努力が乏しいとしている。特に,従順性と自己評価のところで両者の差が大きく,他者からの援助や助言を受け入れたり,全カで解決しようとする態度に欠けると教師はとらえている。


2.学習意欲の背景

(1) 知能・学業
○6年時実施の教研式知能検査SS36であり,体育面の活躍はすばらしいが,他の教科での成績はふるわない。

(2) 性格検査(YG)AB型
○ものごとを深く考えることができず,自己中心的な物の見方をし,協調性に欠ける。

(3) 不安傾向診断検査(GAT)
○すこしのことでも気にしやすく,すべてについて非常に不安が高く,衝動的な行動をとりやすい。

(4) 親子関係診断検査など
○両親とも一貫性のある養育態度に欠ける。
○父親は子供に深い愛情を持っているが,命令,指示の態度が強く,母親は他人との比較により子供に過度な要求をしやすい。

(5) 担任の所見
○基礎学力が不足しているため,授業に集中することが難しい。
○目分で判断することが少なく,周囲の状況に左右されて行動することが多い。


3.心理的治療の仮説と方法

 自分から進んで学習したり,最後まで自力で問題を解決したりすることができるようにしたい。
 そのためには,本人の能力を考え,親・教師・友人などの援助により,内的及び外的な報酬が得られる機会を設定してやることが考えられる。

(1) 本人の学習の仕方をよく話し合い,どうしたら進んで学習に取り組めるかを具体的にきめる。(カウンセリング的アプローチ)

(2) 内的・外的報酬を与える機会を多く設定し,授業などでの働きかけの場と方法を工夫する。(カウンセリング的と行動療法的アプローチ)

(3) 家庭学習などを課する際,本人の能力を考慮し,自力で処理できるよう問題の与え方を考える。(行動療法的アプローチ)

(4) 学校生活の中で,友人との協力的な仕事をする機会を作り,自分の判断で処理すること


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