研究紀要第57号 「学習意欲を高める心理的治療の実践研究 第2年次」 -014/044page
事例2 小学6年B児(男子)
1.学習意欲検査からみた児童像
(1) 児童の自己評価によれば,勉強の必要性を理解してはいるが,自主的に勉強をせず,自分の成績についても関心が低い。しかし,指導に対しては非常に素直である。
(2) 教師は,児童の自己評価より一段低くとらえている。
2.学習意欲の背景
(1) 知能・学業
教研式知能検査SS15
学業成績は1段階(体育のみ2段階)(2) 性格検査(YG)A’型
やや消極的で気力に欠けるが,これといった目立つような特徴はない。(3) 不安傾向診断検査(GAT)
精神的自立心が非常に弱い。(4) 親子関係診断検査など
両親とも養育態度に一貫性がない。また,溺愛している。(5) 担任の所見
知能偏差値は低いが,生活能力の面では普通である。また,生活全体に消極的であり,自分の意見を表すことができない。
3.心理的治療の仮説と方法
自主的学習態度とあきずに最後まできちんと勉強する態度を身につけさせたい。それには,生活全体に意欲を持たせる必要がある。
(1) 自分の考えを表すことがないので,考えを問う機会を多く持ち,発表させる。
(カウンセリング的アプローチ)(2) 学力が低いうえ,自主的に学習しないので,学力に合った教材を与え,賞揚することにより,よい学習習慣を身につけさせる。
(行動療法的アプローチ)(3) 家事を手伝わせて大いに認め自信をもたせる。
(行動療法的アプローチ)(4) 両親には,自立心を育てる養育をするように働きかける。
5.治療の実践
(1) カウンセリング的アプローチ
考えや意見を聞くとすぐに「わかりません。という返事で,はじめからあきらめている態度を示す。(2) 行動療法的アプローチ
○学習習慣を身につけさせるため,毎日,漢字を書く宿題を与え,やってきた時は賞揚する。
・11月9日方法を教えると「ハイ。と元気良く,うれしそうな様子を示す。
・11月10日やってこないので,連絡帳に一人でやるように記す。
・11月11日やってきたので大いに賞揚する。
・11月22日最近,喜んでノートを見せに来る。
・11月24日ノートに"○○先生へ"とある。
・11月28日前日,ノートを忘れて帰ったが別の紙に書いてくる。大いに賞揚する。