研究紀要第57号 「学習意欲を高める心理的治療の実践研究 第2年次」 -015/044page
・12月2日 やってこなかったので,多少大げさに「なんだ,もう続かないのか,がっかりしたなあ,先生のいうこと聞けないのか,ああ。となげいて見せると「先生,今日は2日分書いてきます。という。
・12月3日 2日分書いてきたので「やっぱり書いてきたね。待っていたんだよ」と話すと,嬉しそうな表情を示す。
・12月5日 休日の分も書いてきたので,大いに賞揚する。
・12月7日 国語のテスト終了後,漢字のノートを見て確かめている。(今まではこのようなことはなかった)。テストの採点後,個人的に賞揚ののち,できてないところを指摘すると「もう,いいんだ,あきらめているんだ」となげやり的な態度を示す。
・12月8日 昨日の言葉とは逆に,きちんと書いて来る。
○家庭で食事の手伝いを習慣化させる。
・9月10日 宿泊訓練で困らないためにという理由で家庭で食事の手伝いを勧める。
・9月21日 連絡帳に手伝いのことを記す。
・9月22日 「後かたづけをしました。と元気に報告に来る。準備もするように言討と「やります。とうれしそうに返事をする。
・10月3日 宿泊訓練では,食事係として,良くやっている。「家で練習してきて良かったね。と声をかけ,これからも続けるように話すと,元気に「ハイ」と答え,後かたづけも積極的にやっている。(今まで,このようなことは見られなかった)
・11月4日 手伝いの様子をたずねると「父が決めてくれたので,兄と交代でしています」と,しっかりした返事をする。
・11月11日 母から,食事以外の家事の手伝いを自分からするようになってきたと報告を受ける。
○両親への働きかけ
母親に,宿題はすべて,子供にまかせておくように話すと,話題をそらす。
5.考察
自分の考えを認められたことがなかったためか考えを述べることに対しては,はじめから投げやり的な面がみられる。また,知的能カが低いため,考えをまとめることができないとも考えられる。
宿題を通して,成就感が得られたため,自分から勉強をし始めるようになってきた。
家事を通して,家庭内での存在感が高まり,学校生活場面でも,積極性がでてきている。
YG性格検査では,AE型に変容している。特徴としては,やや,主観的傾向がでてきている。これは,自分の考えを持ち始めてきているあらわれであろう。以上の結果として,学習意欲検査の自己評価では,自主的学習態度,達成志向の態度,責任感が向上し,従順性,反学習価値感が下がったものと考えられる。
これは,学習に対する興味と,自分の考えや行動に自信を持ち始め,生活全体に意欲が出てきているためであろう。そのため,指示に対しては,抵抗を示している様子や,勉強の難しさにあらためて当面している様子がうかがえる。
教師は,学習に対しての自発性や,最後までやりとげようとする気持が出てきていると児童を評価している。今後の課題は,児童の問題点を詳細に把握し,心理的治療を試みることと,両親に対しては,子供の自立性を育てるよう働きかける必要がある。