研究紀要第57号 「学習意欲を高める心理的治療の実践研究 第2年次」 -016/044page

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因子間のばらつきが大きい児童

事例3 小学6年C児(男子)

1.学習意欲検査からみた児童像

学習意欲検査からみた児童像

(1) 本人の評価では,積極的因子については全体に低い評価である。素直さが足りず,責任感もなく投げやり的な面がみられる。それでいて自分は良く見てもらいたいと思って,表面的なことには積極的に活動しがちである。

(2) 教師の評価では,対象児は本人の評価よりも責任感があり,達成志向の態度,素直さ,学習の持続性においても十分あると思っている。


2.学習意欲の背景

(1) 知能・学業
 教研式知能検査SS61,1Q115 (4年時)

(2) 性格検査 (YG) AB型
 神経質で主観的であり,活動性が高く,行動は衝動的な面もみられる。

(3) 不安傾向診断検査 (GAT)
 対人不安,過敏傾向なところがあり,恐怖傾向,衝動傾向もみられる。

(4) 親子関係診断検査など
 父親は,論理性が商くものごとを合理的に考える方で,順応性が足りない。母親は,やさしさを過度に発揮し,してはいけないことを知っていて子供を甘やかしている。

(5) 担任の所見
 考え方が多少幼稚で,自己中心的な考え方が強い。


3.心理的治療の仮説と方法

 担任との信頼関係を基にして,従順性を高め,持続性を高めることによって,学習意欲を高めていくことができる。

(1) 興味を育てる動機づけや,目的目標をきめさせる動機づけを行い,学習への計画性を身につけさせることによって学習意欲を高める。 (行動療法的アプローチ)

(2) 本人の評価と教師の評価との著しい差の要因について明確にし,自己理解をさらに深めさせる。 (カウンセリング的アプローチ)

(3) 集団活動などを通して,本人の主観的な考え方に気づかせ,協力的な行動,持続性,従順性の大切さを身につけさせる。 (行動療法的アプローチ,ロール・プレイング)


5.治療の実践

(1) カウンセリング的アプローチ
○9月26日 宿泊訓練の予備訓練で副班長になったが,整列の仕方,話の聞き方などが思わしくないため,先生方から訓練の目的,集団活動の中での役割,係としての責任のあり方,活動の自主性などについて話される。

○10月2日 授業中の様子がおかしい(外の方ばかり見ている)ので,再三注意を与える。そのため,指示発問に注意を向けず,指名されても発問内容が理解できず,まわりから聞き出すといった状態であった。集中の仕方に


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