研究紀要第57号 「学習意欲を高める心理的治療の実践研究 第2年次」 -019/044page

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○将来は保母になりたいと述べる。(今までは何もないと答えていた)

(2) 読書療法
読書後の感想
○「悲劇の少女アンネ」について
 ・アンネはかわいそう。
 ・自分にはアンネのような生き方はできない。

○「ヘレンケラー」について
 ・ヘレンケラーは三重苦でかわいそうだが,それを乗り越えた強い意志は素晴らしい。

○「ナイチンゲール」について
 ・当時,看護婦1嫌がられ恥ずかしい仕事とされているにもかかわらず,親の反対をふりきってまで看護婦になったことに感心した。

(3) 行動療法的アプローチ
○休み時間や放課後
 少くとも一日3回は,冗談を言いながら話かけをする。

○授業中
 ・挙手した時は必ず指名する。
 ・挙手がない時は,順番に指名していく。ただし,最初には指名しない。
 ・挙手がなくとも,答えがわかっている表情を示す時は必ず指名する。
 ・間違って答えても,答えた行動を認める。

○係の仕事
 清掃班の班長に指名し,班長の役割としての仕事を具体的に指導する。また,班員には,班長の指示に従うように指導する。
 班長の役割が少しでもできた時には大いに賞揚する。

(4) 両親への働きかけ
○夜尿症については泌尿器科の受診で器質的に異常がなかったため,精神的な治療で完治することを説明し,教育センターを勧めた。現在,教育相談部でカウンセリングを受けている。

○両親に養育について話し合うことと,子供に積極的に話しかけるよう働きかけた。


5.考察

 教師が積極的に声をかけたことにより,緊張感が少なくなり,自分から声をかけてきたり,教室内で明るくふるまうようになってきた。
 会話や読書を通して,自分を見つめることができるようになったことから,将来希望する職業が具体的になってきた。
 授業中の指名や係の仕事を通して,存在感や成就感を持ったため,自分の言動に自信を持ち始めた。その結果,授業中,挙手の回数が増えている。
 また,間違って答えても気にしなくなった。(以前は下を向いた)さらに,清掃時に,怖がられている男の子から清掃用具を取り返して分担の子に与えたり,ふざけている子にはきちんと注意などしている。
 親が夜尿症について正しく理解して子供に接したため,子供が夜尿に恐怖感を持たなくなった。さらに,夜尿の回数が激減した。
 生活全体に自信を持ち始めているため,YG性検検査ではC型へ変容した。特徴としては,情緒が非常に安定し,外向性が強くなってきている。
 両親が子供に関心を持ち始めたため,養育態度が一致してきた。
 家庭では,口答えをするようになったが,帰宅後すぐに勉強をするようになった。さらに,目標や計画を立てて勉強するようになり,どんなに時間がかかっても,その日のうちに宿題をすませるようになった。

 以上のように,生活全体に自信を持ち,活動性が高まったことが,自己評価で反持続性を高く,従順性を低くしたものと考えられる。
 教師はほぼ,児童と同じ評価をしている。これは,児童理解が十分になされてきたためと考えられる。

 今後は,夜尿症の完治と,より活動的な生活ができるように援助する必要がある。


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