研究紀要第57号 「学習意欲を高める心理的治療の実践研究 第2年次」 -020/044page

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自己評価と他者評価の差が大きい児童

事例5 小学6年E児(男子)

1.学習意欲検査からみた児童像

学習意欲検査からみた児童像

(1) 自己評価では,進んで学習に取り組み,目あてを持って積極的に学習している。反面,やるべきことを最後までやり遂げることは少ないと考えている。

(2) 他者評価では自己評価と反対に,自主的学習態度に欠け達成志向の態度も劣るとみている。

(3) 検査を全般的に見ると,本人は努力していると思っているが,担任は児童の行動からおとなしく与えられた仕事は出来るが,学習意欲は乏しいととらえている。


2.学習意欲の背景

(1) 知能・学業
○6年時実施の教研式知能検査SS35であり,各教科の学習評定は下位に属し,授業中の態度も消極的である。また,肥満傾向のため動作もやや緩慢である。

(2) 性格検査(YG) D’型である。
○劣等感が強く自分の言動に自信が持てないが,目立ちたがりの性格で他からの注目を得たいと思うところがある。

(3) 不安傾向診断検査 (GAT)
○神経質でありすこしのことでも気になり,非常に不安感をもち,攻撃的なところも強い,また,依頼心が強く,独立心にも欠けるなど精神面での未熟さが見られる。

(4) 親子関係診断など
○両親の養育態度は不一致,矛盾が大きく,共通理解を持った子供への接し方がされていない,更に,父親は子供に能力以上の期待をかけ,きびしい態度で接することが多く,母親は子供の悩みを親身になって聞くことが少なく,いろいろと干渉する。

(5) 担任の所見
○学習への集中心に欠け,物事に対するとりかかりも遅い。また,明るく活発で友だちと一緒に行動することはできるが,じっくり落着いて考えることは特に苦手である。


3.心理的治療の仮説と方法

 神経質ですこしのことでも気になり,学習に対する不安が特に強く,すべての行動に自信が持てない。もっと自信のある言動がとれるように援助する。

(1) 本人との話し合いを通して,学習への取り組みに対する問題点を理解させ,日々の学習の中で適切な助言を与える。 (カウンセリング的アプローチ)

(2) 能力に応じた具体的な目標を持たせ,最後まで努力することの大切さや,成就する喜びを得させる。 (行動療法的アプローチ)

(3) ドリル的な学習を取り入れ,本人の基礎能力を高めるような機会をできるだけ多く設定するようにする。 (行動療法的アプローチ)

(4) 本人のやる気を育てるために,両親や担任


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