研究紀要第57号 「学習意欲を高める心理的治療の実践研究 第2年次」 -024/044page
T得点の低い生徒 事例7 中学3年G生徒 (男子)
1.学習意欲検査からみた児童像
(1) 生徒本人の評価では,一応学習の価値を認識しテストに対する不安もないようにみえるが,全体的には,学習に積極的に取りくむ態度に欠けている。特徴としては,自主的に学習に取りかかったり,目標達成へ向けてねばり強く努力したりしない。また,教師の指導に対して素直に受け入れようとしない面がみられる。
(2) 教師は,学習に対する認識が浅く自発的に学習せず非常にあきやすいと受けとめている。
2.学習意欲の背景
(1) 知能・学業・身体
教研式知能検査SS39。アンダーアチーバーであり,成績は最下位群に属している。肥満型。(2) 性格検査 (YG) A’型
平均的なタイプである。主観的で協調的であるという矛盾がみられる。(3) 問題性予測検査 (DAT)
自己中心的であり,学級集団に十分適応できていない。規範逸脱性が非常に高い。(4) 不安傾向診断検査 (GAT)
衝動傾向が非常に強い。(5) 親子関係診断検査など
父親は,ほとんど放任の態度であり,母親は口うるさく言うが親身になって子供の面倒をみていない。(6) 担任の所見
いくつかの問題行動がある。学用品,提出物,集金などの忘れ物がたいへん多い。家庭生活に対する規範性の欠如が親の態度に内在し,教育的関心が低い。
3.心理的治療の仮説と方法
学習の価値を再認識させ,学習意欲の積極的因子を高めることを目標とする。それには,他者からの有効な援助を受け入れるよう学習への心的従順性を高めることが必要である。
(1) 学力に応じた学習課題に継続して取りくませて成就の喜びを味わわせ,目標に向かって自主的に学習する態度を身につけさせる。 (カウンセリング的アプローチ,行動療法的アプローチ,読書療法)
(2) 規範逸脱性が高いので保健体育の授業やスポーツを通してきまりを守る心を培い,かつ集団生活への適応力を高める。(運動療法)
(3) 本人と教師との人間的ふれあいを数多くもつことにより,心を開かせ,将来の見通しをもたせる。(カウンセリング的アプローチ)
(4) 基本的生活習憤を確立させるとともに,放課後や家庭生活の時間を効果的に利用させるよう両親に働きかける。
4.治療の実践
(1) カウンセリング的アプローチ
○ポカンとして外をながめノートをとらない