研究紀要第57号 「学習意欲を高める心理的治療の実践研究 第2年次」 -028/044page

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因子間のばらつきが大きい生徒

事例9 中学3年I生徒 (女子)

1.学習意欲検査からみた生徒像

学習意欲検査からみた生徒像

(1) 生徒の評価では,達成志向,責任感,他者からの援助を受け入れるなど積極的側面が高い反面,学習活動を阻害する消極的側面が著しく低い。自分なりにまじめに学習に取りくんでいるが自信がもてない状態や意欲の断続がみられる。

(2) 教師の評価は,本人と似ているが,本人ほど因子間のばらつきの差が大きくない。全般的に,努力不足であるとみている。


2.学習意欲の背景

(1) 知能・学業
 教研式知能検査SS42. 成績はアンダーアチーバーであり,女子の中では最下位群に属している。

(2) 性格検査 (YG) A型
 普段はおとなしく目立つことが少ないタイプである。攻撃的・支配的因子が突出している。

(3) 問題性予測検査 (DAT)
 自分をよくみせようとしたり,感情的で気持ちが変わりやすくあきっぽい。規範逸脱性が高い。

(4) 不安傾向診断検査 (GAT)
 身体的な面で不安を抱き,また,がんばりがきかない。やや自罰傾向が強い。

(5) 親子関係診断検査など
 両親とも厳格で責任感が強く,教育についてもある一定の価値観をもっているが,それを子供に押しつけやすい。母親の養育態度に一貫性が乏しい。

(6) 担任の所見
 学習効率が低い。根気がほしい。学級集団での役割分担の責務を果たしている。服装や髪型などの校則違反がある。両親は,教師などの他の意見を一応聞くがあまり本気で受け入れない。


3.心理的治療の仮説と方法

 学習意欲検査のN得点を上げて因子間のばらつきを小さくさせる。そのために,学習の価値を認識し学習へ自己を方向づける態度,失敗を恐れずに積極的に学習しようとする態度や学習に対する忍耐力を向上させることを目標とする。

(1) 学習に対する見通しと取りかかる決断力を向上させるよう援助しながら学習の目的意識をもたせる。 (カウンセリング的アプローチ)

(2) 持続性を高めるために学力に応じた具体的な学習課題に継続して取りくませ成就の喜びと自信をもたせる。 (行動療法的アプローチ)

(3) 時間をかけて話し合いの機会を多くもち,人間的なふれあいを通して,きまりを守る態度を向上させる。 (カウンセリング的アプローチ)

(4) 両親に対して,よき相談相手となる配慮をするよう協力を呼びかける。


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