研究紀要第57号 「学習意欲を高める心理的治療の実践研究 第2年次」 -032/044page

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自己評価と他者評価の差が大きい生徒

事例11 中学3年K生徒 (男子)

1.学習意欲検査からみた生徒像

学習意欲検査からみた生徒像

(1) 生徒の評価では,本人の学業成績からみればきびしく自分を評価している。学習の価値や必要性を認識しているが,学習に気のりせず持続性がないなど消極的な学習態度である。

(2) 教師は,いつも自主的に努力していると認めながらも,因子間のばらつきを大きく評価している。これは日常の学習態度に関してかなり偏りがあるとみているためと考えられる。


2.学習意欲の背景

(1) 知能・学業
 教研式知能検査SS57.オーバーアチーバーであり,成績は最上位群に属している。

(2) 性格検査 (YG) E型
 神経質で,抑うつ性が高く劣等感が強い。また,社会的内向性が強く,非活動的である。

(3) 問題性予測検査 (DAT)
 自分に対して強い劣等感をもち,自己嫌悪の気持ちが強い。対人関係をうまくさばくことができないと思っている。

(4) 不安傾向診断検査 (GAT)
 全体的に不安傾向が強く,特に,自罰傾向が強い。

(5) 健康調査表 (CMI)
 神経症判別:IV 領域に位置する。特に,精神的な自覚症状が顕著であり,「希望がない」「自殺傾向」「易怒性」「強迫観念」「理由のないおびえ」がチェックされた。

(6) 親子関係診断検査など
 子供の教育に関心が高く,生徒はしっかりしつけられている。特に,父親は厳格であり,母親は建て前を重んずる。母親は,父親をたてながらリーダーシップをにぎって行動している。

(7) 担任の所見
 素直であり,いつもまじめに学習するが,患考の柔軟性に欠ける。


3.心理的治療の仮説と方法

 自信をもって目標を達成しようと計画的・積極的に学習に取りくむ態度を向上させることを目標とする。

(1) 神経症 IV 領域に位置することから,本人との十分な話し合いを通して,自己理解を深め,物事を自分自身で解決しようという気持ちをもたせる。 (カウンセリング的アプローチ)

(2) 著しく自分を過小評価しているので,学習場面に限らず,積極的に活動させその努力の成果を大いに認めて自信をもたせる。 (カウンセリング的アプローチ)

(3) 集団生活の中で,与えられた立場での柔軟性のある対応のしかたを身につけさせる。 (カウンセリング的アブローチ,読書療法)

(4) 家庭における養育態度については,本人の自主性を尊重し,父親が強いリーダ」陛を発揮するよう働きかける。


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