研究紀要第57号 「学習意欲を高める心理的治療の実践研究 第2年次」 -036/044page
(2) 学級における実践の結果
1.小学校における実践の結果
ア 学習意欲検査の実施
(ア) 実施学級 昭和57年:5年1組 昭和58年:6年1組
(昭57〜58同一学級で組み替え無し)
(イ) 実施人数 男子17人, 女子15人, 計32人 (昭57は男子19人昭58は男子2人転出)
(ウ) 検査月日 第1年次:昭和58年1月14日 第2年次:昭和58年12月7日イ 学習意欲検査の結果と考察
(ア) 因子別の得点平均(M)と標準偏差(SD)
性別・全体 得点平均
因子名
男子(n=17) 女子(n=15) 学級全体(n=32) 得点平均(M) 得点平均(M) 得点平均(M) 昭57 昭58 昭57 昭58 昭57 昭58 自主的学習態度(S.D) 9.6
(3.1)
11.4
(3.5)
13.2
(2.9)
13.7
(2.9)
11.3
(3.5)
12.5 (4.0)
達成志向の態度(S.D) 12.1 (4.0)
13.1 (4.0)
14.4 (2.6)
14.4 (2.3)
13.3 (3.5)
13.7 (3.4)
責任感(S.D) 13.1 (3.7)
12.9 (4.0)
15.1 (3.2)
15.9 (2.1)
14.0 (3.6)
14.3 (3.5)
従順性(S.D) 10.4
(3.2)
11.3
(3.8)
16.1
(2.2)
14.3
(3.2)
13.1
(4.0)
12.7
(3.8)
自己評価(S.D) 12.5
(3.4)
11.5
(3.8)
14.3
(3.2)
14.9
(2.7)
13.4
(3.4)
13.1
(3.7)
失敗回避傾向(S.D) 15.6
(3.3)
13.7
(3.3)
14.0
(3.0)
14.3
(3.2)
14.8
(3.3)
14.1
(3.3)
反持続性(S.D) 11.2
(4.8)
10.7
(4.2)
12.7
(3.5)
12.1
(3.1)
11.9
(4.3)
11.3
(3.8)
反(学習)価値観(S.D) 11.4
(4.9)
12.3
(4.3)
14.3
(4.6)
14.7
(3.1)
12.7 (5.0)
13.4
(4.0)
P得点 (S.D) 58.0 (14.6)
60.2 (17.3)
73.1 (14.7)
73.2 (9.2)
65.1 (14.8)
66.3 (15.5)
N得点 (S.D) 38.2 (9.4)
36.7 (8.9)
41.0 (8.9)
41.1 (7.5)
39.4 (9.3)
38.8 (8.6)
T得点 (S.D) 96.2 (21.9)
96.9 (25.0)
114.1 (16.3)
114.3 (15.0)
104.5 (21.1)
105.1 (22.5)
<考察>
この学級では全体の学習意欲の平均点(T得点の平均点)が 104.5 から 105.1 となり, 0.6 点の上昇を示している。これは「学習意欲の段階(5段階)。の3段階に位置しており,学習意欲は「ふつう。の学級である。
しかし,学習意欲は若干上昇していると自己評価をしているものの,標準偏差は 21.1 から 22.5 と,若干の開きをみせ,変異係数 (SD/M) も 0.20 から 0.21 と変容しており,学級内の個人間の学習意欲の差が多少開いてきていることを示している。
T得点が上昇した要因は,P得点(学習活動を高める積極的側面の5因子の得点の合計点)が平均 1.2 点の上昇をみたためである。中でも男子の自主的学習態度,達成志向の態度及び女子の責任感,自己評価などの各因子の伸びが,この学級の総体的な学習意欲向上の要因になっている。特に男子の自主的学習態度及び達成志向の態度の両因子に著しい伸びがみられるが,これは次にあげるような「学習意欲を高める心理的治療」の効果によるものと考えられる。○カウンセリング的アプローチにより
・児童の個性や能力に応じた学習計画を立てさせたり,学習の仕方を見いださせたこと。○行動療法的アプローチにより
・児童の能力に応じた学習目標を設定させ,目標達成のためのステップを決めさせたこと。
・児童の学習結果に対し,承認・賞賛・奨励を与え,学ぶ喜びを味わわせたこと。
N得点(学習活動を阻害する消極的側面の3因子の得点の合計点)は 39.4 から 38.8 となり, 0.6 点の下降を示している。その要因は,男子においてN得点が 1.5 点の下降をみたためで