研究紀要第57号 「学習意欲を高める心理的治療の実践研究 第2年次」 -038/044page
的治療が望まれる。また,女子についてはP得点とN得点の表れ方を関連的に見た場合,男子同様特にN得点の2段階に属する児童が多く現れており,この面での指導や援助をさらに強化する必要があろう。
2.中学校における実践の結果
ア 学習意欲検査の実施
(ア)実施学級 昭和57年:2年1組 昭和58年:3年1組
(昭57〜58同一学級で組み替え無し)
(イ)実施人教 男子20人,女子15人,計35人 (昭57は男子23人昭58は男子3人転出)
(ウ)検査月日 第1年次:昭和58年1月10日 第2年次:昭和58年12月2日イ 学習意欲検査の結果と考察
(ア)因子別の得点平均Mと標準偏差(SD)
性別・全体 得点平均
因子名
男子(n=20) 女子(n=18) 学級全体(n=38) 得点平均(M) 得点平均(M) 得点平均(M) 昭57 昭58 昭57 昭58 昭57 昭58 自主的学習態度(S.D) 11.6
(3.4)
11.8
(3.9)
12.5
(1.6)
12.7
(2.4)
12.0
(2.7)
12.2 (3.3)
達成志向の態度(S.D) 12.0 (2.9)
12.7 (3.0)
12.4 (2.4)
13.2 (2.6)
12.2 (2.7)
12.9 (2.8)
責任感(S.D) 13.5 (3.0)
12.8 (3.1)
14.7 (2.4)
13.7 (2.7)
14.1 (2.8)
13.2 (3.0)
従順性(S.D) 12.8
(2.6)
11.4
(2.1)
13.9
(1.5)
13.1
(2.6)
13.3
(2.2)
12.2
(2.5)
自己評価(S.D) 13.5
(3.8)
15.3
(2.9)
15.1
(2.4)
14.8
(2.5)
14.2
(2.9)
15.0
(2.7)
失敗回避傾向(S.D) 13.5
(2.5)
14.5
(2.7)
13.2
(2.8)
13.4
(2.9)
13.3
(2.7)
14.0
(2.8)
反持続性(S.D) 10.6
(3.7)
11.6
(3.9)
10.9
(2.6)
10.8
(2.8)
10.7
(3.2)
11.2
(3.4)
反(学習)価値観(S.D) 13.1
(2.3)
13.8
(2.9)
13.5
(3.2)
14.6
(2.4)
13.3 (2.8)
14.2
(2.6)
P得点 (S.D) 63.4 (13.3)
64.0 (13.4)
68.6 (7.2)
67.5 (9.3)
65.8 (11.2)
65.5 (11.8)
N得点 (S.D) 37.2 (6.1)
39.9 (7.4)
37.6 (6.8)
38.8 (5.6)
37.3 (6.4)
39.4 (6.6)
T得点 (S.D) 100.6 (16.4)
103.9 (19.8)
106.2 (11.0)
106.3 (12.1)
103.1 (14.4)
104.9 (16.7)
<考察>
この学級では全体の学習意欲の平均点(T得点の平均点)が 103.1 から 104.9 となり, 1.8 点の上昇を示している。これは「学習意欲の段階(5段階)。の3段階に位置しており,学習意欲は「ふつう」の学級である。しかし,学習意欲は若干上昇していると自己評価をしているものの,標準偏差は 14.4 から 16.7 と,苦干の開きをみせ,変異係数(SD/M)も 0.14 から 0.16 と変容しており,学級内の個人間の学習意欲の差が多少開いてきていることを示している。
T得点が上昇した要因は,N得点(学習活動を阻害する消極的側面の3因子の合計得点)が,平均2.1点上昇したためである。中でも男子のN得点の伸びが,総体的な学習意欲向上の要因になっている。このほかにも学習意欲向上の要因となっているものとして,男子の自己評価,女子の反(学習)価値観の各因子の上昇があげられる。
これらの学習意欲の向上をもたらしたのは,次にあげるような「学習意欲を高める心理的治療。の効果によるものと考えられる。○カウンセリング的アプローチにより
・学習意欲を失った原因やその背景となっている問題点を生徒に気付かせたこと。
・生徒の個性や能力に応じた学習目標や学習計画を自主的に立てさせるよう配慮したこと。
・学習の手順や方法を見いださせたこと。○行動療法的アプローチにより
・実行できる具体的な学習目標と,目標達成のためのステップを決めさせたこと。