研究紀要第57号 「学習意欲を高める心理的治療の実践研究 第2年次」 -040/044page

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T得点でみると,学級全体では3段階以上への変容の傾向にあるが,2段階以下が24%であることから,この面を考慮しながら,なお一層の心理的治療が望まれる。


(3) 学習意欲を高めるための心理的治療の効果

 学習意欲を高める心理的治療の実践をとおして,効果的であったと思われることがらを述べる。

1.カウンセリング的アプローチによる効果
 自分を見つめさせ,自己理解を図ることを重点にして児童生徒にかかわることにより,次のような効果が期待できる。

ア 学習の仕方がわかり,学習への取り組みが計画的,積極的になる。
イ 学習内容が理解できるようになり,学習の面白さや成就感を味わい,学習意欲が高まる。
ウ 児童生徒が自分の考えを話すことにより学習のつまずきや不安を解消し,安心して学習に取り組むようになる。
工 学習の目的や価値を理解し,自主的に学習に取り組むようになる。
オ 児童生徒が自分の適性や能力を客観的に見つめ,自分の力に応じた学習を進めるようになる。
カ 児童生徒への両親のかかわり方が,児童生徒の適性,能力,希望などを大切にするようになり,安定した学習生活の態度が期待できる。


2.行動療法的アプローチによる効果
 生活の目標をもたせ,目標達成の計画を立てさせ,行動に対し承認・賞賛・奨励を与えることを重点にして児童生徒にかかわることにより,次のような効果が期待できる。

ア 児童生徒が自分の能力に応じた学習目標を定め,目標達成のための下位目標を決めて学習に取り組むようになる。下位目標への到達,さらに学習目標への到達により,児童生徒は成就感を味わい,さらに学習意欲が増す。
イ 目標をもたせることにより,生活が自律的,計画的になる。
ウ 自分の生活上の問題点に気付き,生活記録を書くなどにより,問題点の改善のために継続的に努力をするようになる。
工 両親の過期待,過干渉が少なくなり,児童生徒の生活のぺ一スを大切にするようになる。また児童生徒に対して承認・賞賛・奨励を与えるようになり,学習意欲の向上が期待できる。


3.読書療法による効果
 書物の中の人物の生き方をとおして自分の生活を見つめさせることを重点にして児童生徒にかかわることにより,次のような効果を期待することができる。

ア 書物の中の人物の生き方と,自分の生き方とを対比して,自分の生活を高めようとする。
イ 自分の生活を反省するようになる。
ウ 自分の将来を考え,希望をもち,生活が意欲的になる。
工 思慮深く,自信をもった言動がみられるようになる。


4.ロール・プレイングによる効果
 自分の役割を演じたり,他の演技を見るなどを通し,自分を見つめさせることを重点にして児童生徒にかかわることにより,次の効果が期待できる。

ア 自分の姿を客観視し,改善点に気付くことができる。
イ 自分に対する相手の気持ちをくみとり,素直に受け入れることができるようになる。


5.自律訓練法による効果
 心身の緊張を緩和させることを重点として児童生徒にかかわることにより,次の効果が期待できる。

ア 他人を気にしなくなり,集中力がでてく


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