研究紀要第57号 「学習意欲を高める心理的治療の実践研究 第2年次」 -041/044page

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る。
イ 問題になる心因性の身体症状が軽減し,生活全般に明るさと積極性がでてくる。

6.その他の心理療法の効果
ア 運動療法による効果
 ・対人関係のラポールづくりに有効である。
 ・体の動きが活発になるに伴い,言語活動も活発になってくる。
 ・ルールの必要性を理解し,規律的になる。

イ 箱庭療法による効果
 ・不満や苦しみなどの内的世界を箱庭により表現することにより心の安らぎが得られる。
 ・箱庭で内的世界を表現しながら自分を内省し,自分を変えようとする姿が見られる。
 ・箱庭の作業過程及び作品を媒介にして,児童生徒と教師との心の交流を深めることができる。


(4) 心理的治療の 授業実践 のための基本的要件

 学習意欲を高める心理的治療を効果的に進めるための基本的要件を次のように考える。

1.児童生徒と教師との人問関係が深い愛情と固い信頼関係で結ばれていること。
2.児童生徒の学習能力,適性,興味,関心などの実態が明確に把握されていること。
3.児童生徒の学習意欲の実態とその背景が明確に把握されていること。
4.学習意欲を高めるための心理的治療の仮説が的確に設定され,実施の方法が具体化されていること。
5.児童生徒の学習活動に対し,承認・賞賛・奨励が与えられること。
6.児童生徒が先生や両親,友達の指摘を素直に受け入れる心がまえをもっていること。
7.個人の学習活動が友達に尊重され,受け入れられるような学級であること。
8.児童生徒の学習生活に対する両親の養育態度が,受容的,共感的であること。


4. 研究の反省と今後の課題

(1) 研究の進め方についての反省
 本研究は研究協力校における学習意欲に問題をもつ児童生徒の指導に重点をおきながら学級全体を対象として「学習意欲を高める心理的治療」を試みた実践的研究である。その実践過程は概略次のとおりである。

1.学習意欲検査に基づく「学習意欲に問題をもつ児童生徒」の抽出と,学習意欲の背景の把握
2.学習意欲を高める心理的治療の仮説の設定と方法の具体化
3.心理的治療の仮説に基づく指導の実践とその検証

 このうち,特に学習意欲を高める心理的治療の仮説を設定するに当たっては,学級担任からの研究対象児童生徒に関する的確な情報の提供がその基礎資料となった。また,この心理的治療の仮説に基づいた,担任による日々の授業の実践とその記録が,本研究の検証の大きな支えとなった。
 本研究は直接児童生徒を対象とした実践的研究であったことから,治療の実践は大方学級担任によって進められた。その過程で研究の主体者である教育センターと協力校,学級担任との連携を計る上で,次のようなことが反省点としてあげられた。

ア 心理的治療の仮説の設定や,学習意欲を高める具体的な方法について十分協議すべきであった。

イ 心理的治療の実践後の考察に際しては,学級担任の意向を十分に聴取する手だてを講じるべきであった。

(2) 今後の課題
1.すべての児童生徒一人一人の学習意欲の実態を正しく把握する実践を積み重ねること。
○学習意欲検査,意欲の背景の調査などに表現された内容に基づき,児童生徒の真意


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