研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -005/049page
習対象についての認知的,技能的な側面が基盤にあってこそ,教科のねらいや本質にかかわる「関心・態度」が高まり,更に,それらが原動カとなって次の学習対象の認知的,技能的な側面をより高次のものへ高め,それがまた高次の「関心・態度」を形成すると考える。また,「関心・態度」の一つの目標が達成されるためには,それを支える「関心・態度」に関する下位目標が存在するのが一般的である。
これらの観点から考えて,「関心・態度」の目標を設定する際の留意すべきことを,次に二つあげてみる。
● 目標分析を行い,「関心・態度」と認知的,技能的な側面の目標との相互の関連を構造的に表し,具体的な下位目標問の関連を明確にすること。
● 「関心・態度」の目標は,ある学習対象に対して,「感じる・注意が向く」という段階から「良さがわかる・意味や意義を感じる」となり,更に「自分なりの意義づけができる」そして「日常生活の中に行動化できる」というように,低いレベルから高いレベルヘと目標を階層的に分けられるが,それらを体系的にとらえること。
このように,目標を構造的,階層的にとらえておけば,例えば単元・題材の目標が達成されるまでにいくつかのチェックポイント(下位目標)を設定することができ,その達成状況を段階的に評価することの効果を生み出すものと思われる。そうすれば,「関心・態度」の評価は,必ずしも長期の学習の後でなければ実施できないというものではなく,形成的評価の対象としても評価計画の中に位置づけられることになる。そして,この評価は,児童生徒の目標達成に向けて,有効なはたらきを生み出すと考える。
そこで,本研究では,目標分析により,「関心・態度」と認知的な側面および技能的な側面との関連を明らかにし,「関心・態度」の目標を階層的にとらえて,評価目標を設定した。18ぺ一ジの図4はその一例である。
(3) 評価基準の設定
評価を実施するに当たっては,たとえいかに適切に評価目標を設定しても,児童生徒がその目標にどの程度達成しているのかを確かめるための評価基準が適正に設定されていなければ,その評価は妥当性,信頼性を欠いたものになるおそれがある。
特に「関心・態度」の評価においては,目標は方向目標の性格をもち,そのうえ評価者の主観が入り易く評価が難しいだけに,どのような基準を準備して評価に当たっていくかは,重要な課題である。
ところで,「関心・態度」の目標の中には,その目標が達成されたときに,児童生徒が達成のあかしとしてある行動を示す場合がある。このような目標に対しては,予想されるいくつかの行動をあらかじめ文章に表しておき,これを評価の基準として観察によって評価することが考えられる。
また,目標によっては,その達成の結果が,児童生徒の行動としては観察しにくい場合がある。例えば,目標が児童生徒の内面的なある傾向性をめざすときである。このような場合には,児童生徒の自己評価により,内面に生じた傾向性を文章に表現させ,これを分析することによってその達成状況を評価することが考えられる。この際,児童生徒の内面がより客観的に表出されるのは,いかなる表現形式によるときなのか,この形式についても検討すべきである。
以上のような考えのもとに,本研究では,児童生徒が表現した文章の中の言葉や単語によって,「関心・態度」の目標にどの程度迫っているかを判定するための評価基準の作成を試みた。23ぺ一ジの表6がその例である。また,教師の観察によって評価する場合の基準を作成したが,その例が22ぺ一ジの表5である。
なお,評価基準を何段階にして評価するかということであるが,「関心・態度」の場合には段階をあまり多くしないで,2〜3段階位が適当であると考え研究を進めることにした。