研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -006/049page

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(4)「関心・態度」の評価方法

 目標分析により評価目標が具体化され,その達成状況をチェックするための評価基準が設定されると,その基準にもとづいて正しく評価するための評価方法が選択決定される。

 評価資料を的確に収集し,その結果を指導に生かすための評価方法の選択決定に当たっては,評価方法の備えるべき重要な条件である「妥当性」「信頼性」と教師が手軽に実施し処理できるという意味での「実用性」から検討されなければならない。

 ところで,(2)でも述べたように学習における「関心・態度」と認知的,技能的な側面とは,互いに密接にかかわり合いながら,それぞれ深化・発展していくのであるが,両者の特質上,その評価方法は異なるところが多い。

 認知的な側面についての評価では,評価基準を数量的に決め,客観テストで測定し評価できる。例えば,知識・理解の基礎的目標に対する形成的評価で「十分達成」の基準を85%以上の正答率とした場合,その作問は困難でなく具体的客観的に測定し評価が可能である。

 他方,情意的な側面である「関心・態度」は児童生徒が,学習対象に対して注意したり,意味や意義を感じたり,積極的な意欲を示したりする一種の精神的な準備の状態や持続する固有の傾向性である。すなわち,「関心・態度」を評価するということは,上述のように児童生徒の学習対象に対する内面的な在り方を,外に表れる言動などを通して評価することを意味する。そのため,評価基準を認知的な側面の評価の時のように数量的に明示することは困難であり,評価方法も限定される。

 各教科の「関心・態度」の達成目標に対する評価方法としては,その特質から,教師による観察法,児童生徒が自ら内省し診断し報告する自己評価法,友だちどうしが互に観察し評価し合う相互評価法が,もっとも利用価値が大きい。

 これらの評価方法を選択決定するに当たって,特に留意しなければならないことは,次のようなことである。

●評価しようとする「関心・態度」の目標をよく理解し,その階層的構造などについて十分把握しておくことが必要である。同時に,観察法,自己評価法,相互評価法などの諸方法の特性についても理解しておかなければならない。この両者の理解の上にたってはじめて,「関心・態度」の評価目標に対応する適切な評価方法が選択決定されうるのである。

●「関心・態度」の評価方法にはそれぞれ長所もあるが,おのずと限界もある。まして「関心・態度」は,学習対象に対する内面的な準備性や傾向性であるから,どのような方法を用いようと,一つの方法だけでは完全に評価することは困難である。そのため,教師による観察法を中心に自己評価法や相互評価法などを併用し,より妥当性の高い評価をするように配慮することが必要である。これらの三方法は相互補完関係にあるといえる。

●「関心、態度」の評価の特性上,諸方法の実施技術に習熟するだけでなく,児童生徒の表情や行動などを的確に読みとる力,すなわち,児童生徒を見る目を養っておくことが大切である。更に,収集した評価資料を児童生徒の内面とのかかわりから,正しく解釈し考察し評価できる力を身につけておかなければならない。

●児童生徒の発達段階を考慮して評価方法を選択することも大切である。小学校低学年では自己評価法を実施しても信頼性のある資料を得るのは困難であるが,高学年なら可能である。

 本年度の研究では,評価方法の中でも,特に「観察法」と「自己評価法」に焦点を当て,より高い妥当性,信頼性のある評価の在り方を追究する。

 なお,観察法,自己評価法,相互評価法については,上述の留意点に注意して,次に示すような考えに基づいて実施し,研究をすすめていきたい。

1  観察法 ー児童生徒が,「関心・態度」の達成目標に対して反応する表情や行動などを観


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