研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -010/049page
3 社会科の本質と「関心・態度」
社会科における「関心・態度」の評価の研究を進めるためには,まず,社会科という教科が持っている本質を確認しておくことが大切である。
学校の教育目標の達成を目指して行われる教科教育においては,単に知識や技能を授ければ事足りるとするのではなく,意欲や関心・態度などの情意的な側面を育てることも重視している。それは,いうまでもなく,学校教育の究極的なねらいが,人間性豊かな児童生徒を育てることにあるからである。
この教科教育の一翼を担っている社会科は,他の教科に比べて,特に意欲や関心・態度の育成を重視している教科として学校教育の中に位置づけられている。その理由は,社会科が,人間の社会生活に関する広範な事柄を学習対象とする広領域の教科であるからということだけではなく,この教科が,学習対象の単なる知的理解にとどまることなく,社会生活の中で主体的に生きるための,その生き方にかかわる態度や能力の育成を,特に重視しているからである。
このことについて,朝倉隆太郎氏が
社会科の本質的なねらいは,青少年に社会生活を理解させ,その進展に力を致す態度や能カを育成すること,つまり,社会生活についての正しい理解を深め,民主的な国家・社会の成員として必要な公民的資質を養うことにある。
朝倉隆太郎「社会科の性格」
と指摘していることを受けて,中野重人氏は
端的にいって,社会科の本質は態度形成にある。より正確にいえば,理解・態度・能力の統一的育成を図り,民主社会の形成者を育てることを,その中核的な課題としている。
中野重人「社会科における関心・態度の評価と指導」
と述べている。
すなわち,社会科という教科の本質が,激しく変化し続け,しかも,多様な価値観が存在する現代社会の中で,主体的に生きる社会人を育てることにあり,そのために,他教科に比べて,特に知的(認知的)なものとともに態度的(情意的)なものを大切にしているという認識を持つことは,社会科における「関心・態度」の評価の研究を進める際の基本であると考える。
4 社会科の学力と「関心・態度」
(1) 社会科の学力
社会科という教科の指導は,この教科の本質を十分認識したうえで行われる。ところで,この教科の指導を通して,児童生徒に身につけさせようとしている事柄は何かといえば,それはは「社会科の学力」にほかならない。
それでは「社会科の学力」とは何か。また,「社会科の学力」と社会科における「関心・態度」とはどのような関係があるのであろうか。
学習指導要領に対応して作成されている指導要録に示された評価の観点に着目し,その観点によって社会科の学力を分析すると,その学力は四つの構成要素によって構成されていることが明らかになる。それは,「知識・理解」,「観察・資料活用の能力」,「社会的思考・判断」及び「社会的事象に対する関心・態度」の四つの要素である。
この四つの要素のうち,「観察・資料活用の能力」と「社会的思考・判断」を能力としてまとめて取り扱うとすれば,社会科の学力は,認知的な側面としての知識・理解と能力,情意的な側面としての態度の三つによって構成されているということもできよう。
このことから,社会科における「関心・態度」とは,社会科の学力の一要素としての「社会的事象に対する関心・態度」のことであるということができる。