研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -011/049page
(2) 「社会的事象に対する関心・態度」の意味 社会科の学カを観点別に分析することによって,社会科における「関心・態度」とは何かを明らかにすることができたので,次に,その意味についての考察を進める。
このことに関して,小学校の指導要録の解説では,「『社会的事象に対する関心・態度」の趣旨」(以下「趣旨」と略記する)を次のように述べている。
社会的事象に関心をもち,それを意欲的に調べようとするとともに,社会の一員として自覚をもって責任を果たそうとする。
この「趣旨」の意味することを,どのように解釈するかは極めて重要である。なぜなら,「趣旨」をどのように解釈するかによって,研究の方向が決まるからである。
1 先行研究における「趣旨」の解釈
社会科における「関心・態度」の評価についての研究は,数多くなされている。それらの研究では,「趣旨」がどのように解釈されているかを分析してみると,次のようにとらえているということがわかる。
社会的事象に関心をもち,それを意欲的に調べようとする 社会の一員として自覚をもって責任を果たそうとする ↓
学習態度 の側面
(注)↓
社会的態度 の側面(注)ここでいう学習態度は,授業に対する「関心・態度」と同義に使われている。
このように,先行研究の多くは,「趣旨」を社会的事象についての学習に対する関心・意欲という学習態度の側面と,学習の過程や結果として期待される関心・行動という社会的態度という二つの側面に分けて解釈している。
ところで,上述したように「趣旨」を解釈するということは,学力の一要素としての「社会的事象に対する関心・態度」を,更に,学習態度と社会的態度に二分するということでもある。
そのために,「関心・態度」の評価に関する研究は,学習態度と社会的態度のそれぞれを,どのように評価すればよいかという方向で進められている。
2 本研究における「趣旨」の解釈 すでに,総論で述べた(P4)ように,「関心・態度」は,学力の認知的な側面との相互作用によって深化・発展すると考えられる。
ということは,社会科の学カの一構成要素である「社会的事象に対する関心・態度」も,認知的な側面の学力の諸要素と相互に関係し合いながら,下位のレベルから上位のレベルヘと深化・発展すると考えられるということである。
このことから,本研究においては,「趣旨」を「関心・態度」の深化・発展という視点で読み解釈することが妥当であると考えたのである。
そのために,まず,「趣旨」を達成目標としてとらえることとした。次いで,達成目標としての「趣旨」を分析し,下図のように,達成目標の上下の位置関係(深化・発展の関係)において階層的にとらえて解釈した。