研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -012/049page
社会科の授業を通して,「社会的事象に対する関心・態度」を育てることの目的は,「社会の一員として自覚をもって責任を果たそうとする」態度を育てることにある。
この態度は,一単位時問や小単元単位の短い期間の中で形成し得るものではない。しかし,この態度は,日々の授業の積み重ねのうえに形成されるということも,また事実である。
このことから,一単位時間あるいは小単元程度のまとまりの授業の積み重ねを通して,「会的事象に関心をもち,それを意欲的に調べようとする」児童生徒を育てるための働きかけを続けることによって,「社会の一員として自覚をもって責任を果たそうとする」態度も育てることができると考えたのである。
(3) 「社会的事象に対する関心・態度」の評価についての基本的な考え
1 「社会的事象に対する関心・態度」の評価
「社会的事象に対する関心・態度」を学習態度(授業に対する「関心・態度」)と社会的態度という二つの側面からとらえるのではなく,「関心・態度」の深化・発展という視点に立つて階層的にとらえるということは,その評価も前ぺ一ジの図2のように階層的に分析した達成目標に合わせて行うということでもある。
社会科の授業が行われる場合を考えてみると,まず,観点別目標分析がなされ,「社会的事象に対する関心・態度」の達成目標が明示される。更に,この達成目標は階層的にとらえられ,指導計画(評価計画)の中に明確に位置づけられる。この指導計画(評価計画)の中に階層的に位置づけられた達成目標に対応して,「社会的事象に対する関心・態度」の評価は行われなければならないと考えるのである。
2 社会科の授業に対する「関心・態度」の評価
さて,これまで,社会科におけるr関心・態度」とは,社会科の学力の一構成要素である「社会的事象に対する関心・態度」のことであると定義して論を進めてきた。それは,「社会的事象に対する関心・態度」と社会科の授業にする「関心・態度」とは,同質ではないという考えに基づいたからであった。
ところで,社会科の授業においては,「社会的事象に対する関心・態度」だけではなく,「知識・理解」や「観察・資料活用の能力」,「社会的思考・判断」という認知的な側面の学力も育てるために,児童生徒に対して,さまざまな働きかけが行われる。そして,この働きかけによって育てようとしている社会科の学力の諸要素は,すでに述べたように,構造的なつながりをもって相互に関係し合っている。
このことを踏まえて,社会科の授業に対する「関心・態度」の評価について考察してみる。
いま,ここで,社会的事象に関する,ある「知識」を習得させることを主な目標として行われる授業を想定してみる。
ただし,その「知識」は,単元あるいは小単元末段階の達成目標の一つである「社会的事象に対する関心・態度」を形成するにあたって,必要欠くべからざる基礎的な知識として,単元の指導計画に位置づけられているものとする。
そこで,この授業においては,児童生徒の全員が,その「知識」を習得できるように配慮して作成された学習指導案を基に指導が行われることになるであろう。
より具体的にいえば,その「知識」が確実に身につくように,児童生徒の実態に即した指導の内容や方法,形態が採択され,授業が進められることになるであろう。
より具体的にいえば,その「知識」が確実に身につくように,児童生徒の実態に即した指導の内容や方法,形態が採択され,授業が進められることになるであろう。
なぜなら,その指導内容,方法,形態に対して興味や関心をいだきながら学習に取り組むか否かは,「知識」が習得されるか否かと深くか