研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -014/049page

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5 「関心・態度」の目標分析

 「関心・態度」を評価しようとするとき,はじめに問題にしなければならないのは,「何を評価するのか」ということである。つまり「関心・態度」の評価目標をどうするかが問題となる。言うまでもなく,評価目標は,指導目標と表裏一体をなすものであり,「何を評価するか」を問うことは「何を指導するか」を問うことにほかならない。

 ところで,前にも述べたとおり,ここで評価しようとしているのは,授業そのものに対する「関心・態度」ではなく,「社会的事象に対する関心・態度」である。いうならば,社会科という教科の本質にかかわる「関心・態度」が問題にされなければならないのである。従って,「関心・態度」の目標の設定にあたっては,次のことに十分留意する必要がある。

 ●「関心・態度」の目標は.学習内容に即して設定されなければならない。

 ●「関心・態度」の目標は,「知識・理解」,「観察・資料活用の能力」,「社会的思考・判断」といった認知的な側面と関連づけて設定されなければならない。

 こうした考えに基づいて,この項では次の順序に従って「関心・態度」の目標分析を進めてゆく。

 ●小単元の学習内容を明確におさえ,それに即して「関心・態度」の目標を設定し,認知的な側面における目標もこれと関連づけて設定する。

 ●目標として設定された「関心・態度」の形成過程を構造的にとらえ,その形成過程における「関心・態度」の下位目標を設定する。

(1) 小単元における「関心・態度」の目標分析

1 学習内容の明確化

 上に述べたとおり,「関心・態度」の目標は学習内容をぬきに,設定しえないものであるから,まず小単元の学習内容を明確にすることからはじめなければならない。

 この小単元は,単元「わたしたちの生活と日本の工業」の一部をなすものであるが,次の小学校学習指導要領の記述は,単元の学習内容を一般的に示したものである。

 我が国の工業について,工業地域の分布の特色を理解するとともに, 工業が盛んな地域の具体的事例を取り上げ,人々が土地や交通の条件を生かしながら新しい技術の開発,資源の有効な利用及び確保などに努めていること, 国民生活の上で工業製品の生産が大切であること及び各種の公害から国民の健康や生活環境を守ることが極めて大切であることを理解すること。

 我が国の工業について,工業地域の分布の特色を理解するとともに,工業が盛んな地域の具体的事例を取り上げ,人々が土地や交通の条件を生かしながら新しい技術の開発,資源の有効な利用及び確保などに努めていること,国民生活の上で工業製品の生産が大切であること及び各種の公害から国民の健康や生活環境を守ることが極めて大切であることを理解すること。

 水島工業地区についての
1 製鉄所立地の自然的・社会的条件
2 製鉄業における新しい技術の開発
3 製鉄業における資源の確保とその有効な利用

2 学習内容に即した目標設定

 上のように具体化された小単元の学習内容に基づいて,「関心・態度」の目標を設定し,それにかかわる他の観点についての目標も同時に設定する必要がある。

 このことを実際に行うためには,次のぺ一ジの表2に示すように,一方の軸に学習内容を置き,もう一方の軸には,「関心・態度」や他の観点を置いて,両者の交わりに具体的な目標を設定するやり方が考えられる。例えば,製鉄所立地の自然的・社会的条件という学習内容に即して,「関心・態度」については,「水島工業地区のなりたちに関心を持ち,製鉄所の立地条件を追究しようとする」という目標が設定され,


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