研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -034/049page

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 「まとめ」の文章例に引いてある下線は,文章からA,B,C,Dを判断するときに,それの根拠としたことばである。たとえば,

 Aの男子H・NとAの女子K・Kの場合
 「つづきをもうすこしやりたかった」
 「また勉強したいと思いました」
などは,学習の発展のための動機に直結するものと考えることができるし,

 「水はどこからくるのか,水をどこへ流すのかなどについて,もっと調べてみたいと思う。」
 「これからもっと調べてみたいと思うことは水はどこからくるかということです」

 などは,学習対象への興味が,学習の発展のための動機づけとなっていることを判断することになったことばである。なお,Aの場合,B,Cの基準を満たしていることは言うまでもない。

 Bでは,学習対象を感動を持ってとらえていることばを判断のめやすにしている。それが,Bの男子H・Sの場合は,
 「びっくりしました」
 「おもしろかったです」
であり,
Bの女子E・Kの場合は,
 「おどろきました」
なのである。

 先の文章例に載せなかった子どもの「まとめ」の中に,「鉄の生産量が多いのにおどろきました」という文章がある。これは,感動の対象が目標と一致していない例である。

 Cの男子T・Nの場合
 「たのしかった」の対象は,「調べること」であり,「水の量」に対するおどろきや関心ではない。しかし,「製鉄に必要な水」に注意が向いていることは確かであると,下線の部分から判断した。

 Cの女子T・Uの場合は,Bとの境界近くにある文章で,学習対象に対する感動を直接判断することはできないが,使われている水の量の理解に情意をともなっていると考えることができる。しかし,これをCとしたのは,「きょ大」ということばがどうして用いられたかが不明であるし,「水のりょうをプールであらわす」という文章も,結局,作業そのものに対する関心の域を出ないと判断したためである。

 Dは,男女各1名ずつであり,2紙とも白紙といえるものである。ここで注意しなければならないのは,これによって,この2名には,「関心・態度」が全くないと決めつけることである。文章を書かせることによって評価しようとしたこの場合には,「関心・態度」が表現されなかったとみるべきである。

 Dの男子H・Mの「う〜ん」だけを見れば,「関心・態度」の評価基準には,とうていあてはまらない。

 しかし,授業中の態度を観察していると,学習の対象に注意が向いていなかったとは言い切れないのである。このことは,B,Cの子どもについても言えることで,Aの子どもでさえ,この一つの方法で評価し得たと考えてはならない。

 下位目標4の評価結果から,次のようなことがいえる。

・文章による「まとめ」から「関心・態度」を評価するにあたっては,情意的なものも表現されるように日ごろの「まとめ」の書き方の指導を十分にしておくことが大事であること。
・文章による「まとめ」から評価できるのも「関心・態度」の一部分であり,それをもって,子どもの「関心・態度」を評定するようなことがあってはならない。
・文章から「関心・態度」をとらえようとするときは,目標分析を十分におこない,評価基準にあわせて評価すべきであること。

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