研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -040/049page
(2) 「関心・態度」の目標と評価方法
1 観察法
ア 記録をしない観察
指導者が観察したことは,いつも記録に残さなければならないとは限らない。実際には,「関心・態度」の評価に専念しているわけではなく,認知的な側面の評価についても適切な場と機会が設けられ,適切な方法で評価がなされ,学習指導が行われている。従って,1単位時間内に数回にわたって「関心・態度」の評価を実施したり,まして,それらを記録にとどめながら学習指導をすすめていくことは難しいことである。そこで,目標分析の結果から最良の場と機会,そして,方法を模索すると同時に,記録にとどめることをしない観察も十分に生かすようにすることが大事になる。これは,学習の状況とともに,子どもたちの「関心・態度」を瞬時につかんで,適切に対応していくという,指導力があるといわれる教師の授業によく見られるものである。(1)の3に述べた「鉄の生産工程の理解が十分でないと観察した事例」などは,これにあたる。しかし,ここに問題がないわけではない。このような観察による評価は,ややもすると,集団の観察にカが注がれ,子ども一人一人,特に,学級全体から見ると少数派の「関心・態度」が大事にされない傾向があるからである。
イ 観察したことを記録に残す
「関心・態度」の評価では,目標に対して,何を,どう見るかという観察の視点を決めることが難しい。つまり,評価基準の設定が重要だということである。評価基準が明確であれば,観察も的確に行えるということになる。そしてもう一つ重要なのは,「簡潔」な基準にするということである。観察は,絶えず動いている学習活動の進行中,しかもその中で一時として同じところにとどまっていない子ども一人一人の「関心・態度」を見ようとするのであるから,その観点は,「明確」,「簡潔」でなければならない。少なくとも観察による場合は,(+)か(ー)かという視点を持っていれば十分であり,結局具体的には,(ー)の評価基準に該当する子どもだけをチェックしていけばよいということになる。
「検証授業1 2 3」を通して,観察の結果を名簿に記入する方法と座席表に記入する方法を実施したが,それぞれに,次のような長短があった。
・名簿
・記入するのに座席表より時間がかかる。
・学級全体や男女の傾向がとらえやすい。
・集計しやすい。
・子ども一人一人の何時問かにわたる「関心・態度」の変化がわかる。・座席表
・記入するのに時間がかからない。
・グループ作業の観察によい。
・チェックの際,色で区別するとか,記号を変えるとかしないかぎり,その都度座席表を使うことになり,変化や傾向がとらえにくい。以上のようなことから,授業中は,座席表にチェックし,授業後,名簿に転記するのがよりよい方法であると考えている。
(1)の1で述べた下位目標2,3の評価は,これの座席表によるマイナスチェックである。
2 自己評価法
ア 多肢選択式
「検証授業1 2 3 」を通して最も数多く試みられた方法である。P20のNo.1,No.3,No.4,No5,P21のNo.1,No.4,そして,(1)の1における下位目標の1の評価もこれである。
これらは,全て質問紙に記入する方法をとっている。これは,指導者が,授業後,その結果を分析し,指導に役立てるためである。なお,その結果によって,その場でフィードバックを必要とするものについては,「挙手」によってそれをとらえて指導に生かすようにした。