研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -041/049page
次の表11は,「検証授業1」におけるNo.1,No.3,No.4の評価結果を名簿に転記したものである。
この評価は,「社会的事象に対する関心・態度」のそれではなく,作業に対する「関心・態度」の評価を自己評価法でおこなったものであるが,この事例から,方法を組み合わせることの意味をとらえることができる。
表11 作業に対する「関心・態度」の評価
児童番号/評価 作業前の評価 作業中の評価 作業後の評価 1 0 + 0 2 + + + 3 + + + 4 ・ 0 + 5 0 0 + 6 + + + 7 0 0 + 8 0 0 + 9 + + + 10 0 0 + 11 + + + 12 欠 欠 欠 13 0 + + 14 + + - 15 0 0 + 16 + + + 17 0 0 - 18 0 0 + 19 ・ ・ ・ 20 0 0 + 21 + + + 22 欠 欠 欠 23 0 0 0 24 0 0 0 25 + 0 + 26 0 0 0 27 + + + 28 0 0 + 29 0 0 0 30 0 0 - 31 0 0 0 32 0 0 + 33 0 0 0 34 0 0 0 35 + + + 36 0 + + 37 - - - 38 + + + この作業は,50年ほど前の水島の地図の上に,現在の水島工業地区の地図(トレーシングペーパーに印刷したもの)を重ね,埋め立て地の部分に色ぬりをするというもので,工業地区成立の経緯とらえさせるねらいのもとに行われた。
表11のように整理してはじめてわかったことであるが,この作業に対するNo.37の子どもの「関心・態度」である。作業の前,中,後ともマイナスになっている。もし,作業前のチェックの時に,指導者による観察法を組み合わせていたなら,作業中あるいは,作業後には0,もしくは,十になっていたのではないかと考えることができるのである。このことから,観察法,自己評価法の相補関係を重視し,これらを組み合わせる方法が有効であることがわかる。
イ 作文法
3回の検証授業の中で,作文による自己評価法は,主に,学習のまとめの段階で用いられた。これは,作文がある程度まとまった学習活動の後でないと期待する内容が表現されにくいと考えたためである。
作文法では,大別して2つの方法をとった。その1つは,「まとめ」の文章を書かせるにあたって,何について書いてほしいか指示する方法で,もう1つは,書く内容についていっさい子どもにまかせるという方法である。
内容指示の例としては,P20のNo.6や,P21のNo.5,No.6がそれである。
「わかったこと」「感想」「意見」「よくわからないこと」「さらに学習したいこと」など,書くべき内容について,あらかじめ指示する方法は,指導者の期待する内容が確実に表現されることが多いので,評価観点を決めて評価していくことが比較的容易である。しかし,「感想」とか「おどろいたこと」などの指示は,それが,本当に子どもの内部にある「関心・態度」の一部が表現されたのかどうかをあいまいにしてしまう。つまり,関心があるか否かの問いに答えることが,子どもの関心の表現になるかという問題がここにある。
従って,(1)の1において,下位目標4の評価で試みたような作文法が,今のところ最良であると考えている。
以上から,評価方法について,次のようなことがいえる。
・目標を評価するに適した方法を選ぶこと。
・観察の観点を明確,簡潔にすること。
・評価法の組み合わせがよいこと。
・評価をどう生かすかによって「挙手」,「質問紙」などの手段を選ぷこと。
・作文法は,その長短を考慮すれば有効であること。