研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -043/049page

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(4) 授業者の感想

「関心・態度」の評価に関する検証授業に取り組んで

          授業者 福島市立笹谷小学校教諭 高村正壽

 学年末や学期末になると,先生方の話題になりながら,結論が得られないままになってしまうのが「関心・態度」の評価である。私自身も,その重要性が分かっていても,情意領域にかかわるものだけに,「関心・態度」の変容の見方や具体的な評価基準がつかめず,「関心・態度」の評価のあるべき姿に確信を持てないまますごしてきた。

 このような時に,研究協力校の一員として,授業の中で「関心・態度」の評価の在り方について究明していく機会を与えられたわけである。以下何回かの検証授業を通して感じたことのいくつかを述べてみたいと思う。

 第一に,「関心・態度」の評価目標は指導目標と表裏の関係にあるという,評価に当たっての最も基本的なことが実践の上で理解できたことは,成果のひとつであった。

 学習指導案を作成するに当たり,観点別に目標分析を行い,それを単位時問へと具体化する過程で「関心・態度」の評価目標もおのずから明らかにされてきたのである。要は,綿密な目標分析にどのように取り組むかが問題であり,このような分析を怠ってきた日ごろの教材研究を反省するまたとない機会であった。

 第二に,望ましい「関心・態度」の評価方法を明らかにするためには,教師の創意ある継続的な取り組みが大切であることを,実感として体得し得たことは,今後の実践に明るい見通しを持たせた。

 「関心・態度」を評価するには,多様な方法が考えられる。そして,それらの方法には,それぞれ固有の特質がある。私たちは,その特質を明確につかむとともに,自己の創意を生かすことによって,借り物でない評価方法を開発していくことが必要だと思うのである。

 例えば,作文による自己評価法はこれまでもしばしば実施してきたのであるが,今回の実践では,少しでも児童一人一人の情意的なものが表現されることを期待して,「おかあさんあのね。水島工業地区がどのようにして作られたかと言うとね」というような手紙形式にしてみた。はじめての試みでもあり,児童にとっては少々唐突に感じられたのか,期待した学習の成果としての児童の心情までくみ取るには至らなかった。しかし,その後の指導において,意図的にこの方法を試みたことにより,現在では児童自身がこの学習活動に自然に取り組めるようになり,内容的にも,「関心・態度」をとらえることができるものが多くなったように思われる。最近,他の教科においても,こうした方法を試みるまでになったが,継続的な実践の成果であると思う。

 第三に,「関心・態度」の評価を試みる中で,今まで気付かなかった児童の一面を発見できたことは大きな収獲であった。

 私たち教師は,ともすると認知的な側面からのみ子どもを見がちである。私自信も,子どもを多面的に見なければならないことを頭では承知していても,実際には認知的な側面だけで子どもをとらえる傾向が強かった。今回の検証授業は,こうした私の児童観に根本的な修正をせまるものであった。

 「関心・態度」の評価にはまだまだ分からないことも多い。上に述べたような成果を土台として,今後とも自らの授業を厳しく問い直し,より良い「関心・態度」の指導と評価に精進していきたいと考えている。

 おわりに,教育センターの諸先生方の労苦をいとわないご指導に心から感謝申し上げ,授業者の感想とする次第である。


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