研究紀要第61号 「生徒指導に関する研究」 -001/043page
1 研究及び主題設定の趣旨
日々実践されている生徒指導の中で,事象や場面の相違はあっても,最近の児童生徒の中には,「耐えることの乏しさ」を感じさせられることがあり,それ故に問題傾向に走ってしまう例もみられる。
昭和57年度に,総理府青少年対策本部が刊行した青少年白書の「青少年問題の現状と対策」の中でも,現代青少年のパーソナリティについて次のようにまとめている。
● 「今日の青少年には,耐性の欠如,依存性,自己中心性が広くみられる。」
● 「非行の一般化傾向にもみられるように,非行等の問題行動が,特定の環境にある青少年によってのみ生み出されるのではなく,現代青少年に共通するパーソナリティに深いかかわりがある。」
当教育センターでは,このような指摘に基づいて,県内児童生徒の「耐性」についての実態を調査し,分析と考察を加え,教育現場の指導の一助に資するという趣旨のもとに「児童生徒の耐性に関する研究」を主題として設定し,この研究に取り組むことにした。
2 研究に対する基本的な考え方
本研究を進めるに当たって,生徒指導と耐性の関係,あるいは耐性の概念について次のようにとらえた。
1. 耐性と生徒指導の課題
児童生徒を含む青少年の問題行動は,近年著しく増加し,大きな社会問題となっている。その内容も,反社会的,あるいは非社会的な問題行動が,まさに多様化し,更には非行の低年齢化や粗暴化の傾向も加わり,これら問題行動は従来の児童生徒観では理解しにくいという実態にあるのではないかと考えられる。
本来,明るく健全に成長していかなければならない児童生徒が,このような問題行動に走る背景には,児童生徒自身の問題,家庭教育上の問題,更には児童生徒をとりまく社会環境上の問題など種々考えられるが,一方児童生徒の内面に目を向けると「耐性の欠如」が大きな比重を占めているように思われる。
このことに関して,昭和57年6月青少年問題審議会が答申した,「青少年の非行等問題行動への対応」の中で,最近の青少年の非行をはじめとする問題行動についての審議を通じて,次のようにとらえている。
まず,変化の時代における今日の青少年のパーソナリティ(個性,態度等)の大きい変容である。すなわち,その中心をなすものは,内的幼児性あるいは自己中心性の肥大化である。
物質的に豊かな社会において物への欲求がほぼ完全に充足され,多くの青少年は,幼児期に特に手厚い保護の下に養育されている。しかも,その環境は,成長期においても持続し,内面的な発達を妨げている場合が少なくない。
今日の青少年は,ややもすると心身共にひ弱で,試練やざ折に耐える力,いわゆる耐性の欠如が見られ,依存的,受動的で自発性,主体性に乏しい。更に,非行を行った少年の特徴の一つとして「不満耐性が弱く,性格がひ弱であるため,わずかの欲求不満を乗り越えることができず,それに押し流されたり,また,望ましくない欲望を抑えて正しい方向に進む意欲等が乏しい。」とも指摘している。
これらのことは,生徒指導に携わるものにとって謙虚に受けとめなければならないものと言