研究紀要第61号 「生徒指導に関する研究」 -002/043page

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える。耐性を培うということは,単に非行の防止ということだけではなく,児童生徒の望ましい発達を促すためにも欠かすことのできないものである。

 「耐性」を望ましい人間性の発達ということから考えてみると,複雑な人間社会において自己の欲求が,常に即座に満足されることは,まれであろう。そのため,社会生活におけるいろいろな場や発達途上のそれぞれの段階において望ましい適応能カを育成するうえでも,耐える力を身につけさせなければならないと思われる。

 したがって,種々の条件によってもたらされる障害や困難に直面しても,その条件に適合した欲求の満足を遅延させたり,困難を乗り越える能力の育成は欠くことのできないものであると言える。

 この「耐える力」を,幼児期はもとより,児童生徒の発達段階に即して,順次,継続的に身につけさせていくことが,非行等問題行動の防止と併せて,生徒指導本来の開発的な指導がより効果的に進められることにもなるのではないかと考えられる。

 このように考えると,児童生徒に「耐える力」をいつ,どこで,だれが,どのような具体的事象を通して指導していくかが一つの課題と言える。

2. 耐性の概念

 本研究の基盤となる「耐性」という概念を現代教育用語辞典及び生徒指導用語辞典(第一法規)では,おおよそ次のように定義している。

・現代教育用語辞典

 耐性(to1erance)とは,「ものごとに耐えうる力のこと。心理学用語としては,フラストレーションに耐えうる能力という意味で,フラストレーション・トレランス(欲求不満耐性)と呼ばれている。人は欲求をもって生活していく過程で,必ずしも欲求が充足されるとは限らない。このようなとき適応に失敗したり,不適切な反応をすることなく,欲求不満に耐えうる能力が必要である。これは自我の強さと状況の関係によって変わる。」

・生徒指導用語辞典

  耐性(to1erance)とは,「欲求理論から出てくる概念で,不満に耐えるカをいう。人は,その生を充実し,自己実現を図るために,さまざまな欲求をもつ。ところが,その欲求はつねに充足されるとは限らない。

 充足されないと不満な感情が起こる。それが欲求不満であり,行動問題,人格障害の原因と考えられるが,不満がそのまま障害となるわけではない。ある程度まで,人はそれに耐えるカをもっている。それが耐性である。〜以下省略〜」

 本研究では,この二つの定義をもとに,「耐性」の概念を次のようにとらえた。

 耐性とは,何らかの目標に向かって(目標志向)行動を起こしたとき,外的あるいは内的条件によって阻害され,自己の目標達成や満足が得られないことがあっても,その条件に耐え,望ましい生活をしていこうとする,あるいは,それができる力である。

3. 耐性の構造

 当教育センターでとらえた耐性の概念については,すでに前に述べたところである。この概念に基づき,児童生徒の耐性の実態をとらえるための調査項目を構成するに当たっては,その基本的態度として」耐性を支える,あるいは阻害する特性・要因を明確にするとともに,それらの関連性を構造的に把握することが重要であると考えた。

 耐性にかかわるこれら特性・要因が,それぞ


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