研究紀要第61号 「生徒指導に関する研究」 -033/043page
児童生徒が行動する場合,個々の持つ価値観には相違があろう。回答は「しかたがないから出なければならないと思う」に集中するであろうと予想した。しかし,結果においては,「なぜ自分が出なければならないのか」,「何をするのかわからないから出たくない」を合わせると小学生で46%,中学生で65%になっている。
反面,積極的な態度と見ることのできる選択肢3,4を合わせると小学生54%,中学生35%であり,これが現実の姿ではないかと推測できる。
児童生徒が目標に向かって行動を起こすとき,子供なりに行動の様式や手段,方法についてどれが望ましいかの選択評価を行うものであり,そこに生じたものがその人のもつ価値観であろう。
目標を明確にもつことや正しい価値観をもつことは,自分から進んでやろうとする積極的な態度につながるものと言える。したがって,目標の不明確や価値観の喪失が耐性を阻害する要因ととらえたとき,家庭や学校においてこのことに配慮した指導は欠くことのできないものである。
3 「しつけ」に対する保護者の意識
問い あなたはお子さんに対して,いろいろなことについて「がまんする。」というしつけをどの程度しておりますか。 しつけは,家庭教育の基本とも言える。しかし,しつけの内容や方法は家庭によって差異がある。この調査では,小・中とも「ある程度は厳しくしている」,「かなり厳しくしている」を合わせると小学校で88%,中学校で80%である。
しかし問題なのは,家庭のしつけの程度と併せて子供自身が,それをどの程度受容し,実践しているかということである。ともするとここでは大きな差があり,実践を伴わないものであっても,親の立場としては「厳しくしている」と意識している面はないだろうか。
非行等問題行動の背景には,家庭における教育機能の低下などがその要因の一つになっているのではないかという指摘もあるように,問題行動の防止と併せて,耐性を培うためにも,家庭における望ましいしつけに期待するものが大きいと言える。
耐性とは,不満に対する抵抗力であると言われるように,これは子供の素質そのものよりも,生後の経験や訓練に依存するのが大きく,やはり鍛えなければ培われないものと言える。
そして,子供は周囲の大人(保護者)などから具体的な賞罰を伴った是認と否認をくり返しうけることによって,体を通して物事に対する価値判断や耐える力を体得していくのである。
しかし,しつけの不徹底などから,例えば子供の要求・欲求をすぐ満たしてやることのみを習慣化させれば物事はすべて自分の思い通りになるという一一面のみが育ち,がまんの心は育たないのではないかと思われる。
したがって,実践を伴ったしつけが発達段階に即して継続的になされることが大切である。