研究紀要第61号 「生徒指導に関する研究」 -035/043page
5 教師が考える耐性の促進特性と阻害特性
問 い次は耐性を支えるもの(促進特性)と,耐性を阻害するもの(阻害特性)として一般に考えられているものです。それぞれについて,比重が大きいと思われるものについて3つずつ 耐性を促進する特性として,小学校,中学校ともに「意志力」,「耐久力」,「自己統制力」を上位に挙げている。
まず,「意志力」について言えば,意志力のもつ機能には,自己の精神的活動を推進するプラスの働きと抑制するマイナスの働きとの二つがあると考えられる。前者の働きが意欲・やる気と言われる部分であり,後者の働きが抑制力であって,抑止力とか忍耐力という言葉で表現されている。
したがって,プラスの働きが強くなれば,数々の困難にも耐えてやりぬこうとする強い意志が醸成され,耐える力が培われていくものと言える。
また,自己のもつ数々の要求や欲求,あるいは問題行動等を含む行為や行動を誘発する要因に対し,前述のマイナスの働きが強く出れば自己を抑制することにつながり,ひいては,これが自己の望ましくない要求や欲求を抑止する力につながるものと考えられる。
このように考えるとき耐性を促進するためには意志力は大切な特性と言える。
次に,「耐久力」について考えてみると,耐久力には身体的な耐久力もあろうが,ここで重視したいことは心の耐久力である。がまん強い子,ねばり強い子と言われるのは,持続性と併せて主として心の耐久力を指すものと言える。
また,「自己統制力」について言えば,子供たちの日常生活の中には,自己の行動に比較的広範囲な自由がある場面も少なくない。しかし,自己の要求や欲求あるいは衝動などを制御することなく自由な振る舞をしていたのでは,集団の維持や社会生活への適応を図ることは困難であり,ここに耐性との関連が深いとみることができる。
更に,「洞察力」,「感情・情緒」は前述の特性に比べ低い割合ではあるが,耐性を促進する特性として軽視することのできないものであると思われる。