研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -002/049page
われ方の違いであり,また表面化した現象上もしくは結果についての相違であり,問題行動の本質的な差異を示すことではない。本研究の標題が,「反社会的行動をもつ児童生徒への心理的な指導援助」であるのは,本研究の対象を焦点化するとともに,児童生徒の問題行動を的確に診断し,適切な指導仮説をたてて有効な指導援助ができるようにするための視点を定める必要があるからである。
反社会的行動の種類を次に示す。これの順序についての論理的な根拠は特にないが,小・中学校高等学校の順に発現する行動,そして発現の頻度等を考慮した。
(2) 反社会的行動の種類
〈いじめ〉
1対1,または一人に対して集団で行う「暴力」,「言葉」,「無視」などによる「いやがらせ」の行為をいう。エスカレートすると陰湿化し,傷害事件に発展することもある。いじめの行為は一過性のものと,組織的,継続的に構造化された行為とがある。特に後者が問題になることが多い。
〈恐喝〉
相手から金銭や物品を取り上げる行為で,金を借りる形をとったり,強要したりなどして金品をとりあげる行為をいう。また,「カンパ」と称して,不特定多数の者に割り当てて金品を集める行為もある。
〈盗み〉
一人もしくは集団で盗む行為をいう。盗むものは大半が現金であるが,自転車盗み,オートバイ盗みなどがある。万引きなどは手当りしだいの場合もある。一過性のものが多いが,慢性化したり,ゲーム化したりすることがある。補導されても罪の意識がほとんど無いことがある。
〈放火〉
目的物を,燃焼させるために意図的に火をつける行為をいう。
〈怠学〉
学校へ行かなければならないという義務感が薄く,学業生活を怠ける行為をいう。
〈交通法令違反〉
交通法令に違反して行う行為で,次のような行為をいう。最高速度違反,通行区分・追越違反,信号無視,一時停止違反,無免許運転なとである。
〈無断外泊・家出〉
親に無断で,深夜徘徊から友人宅などへ宿泊する行為をいう。家出は,家を出てしまう行為のことである。
〈暴力〉
身体的に危険を感じさせるような行為,または実際に危害を加える行為をいう。
それが,学校において起こった場合を「校内暴力」という。暴カを起こした原因や動機が学校と密接に関連している校外での行為も含めて考える。
大別して,「対教師暴力」,「児童生徒間暴カ」,「対公共物破壊」がある。
また,親や家族の一員に対して暴力を振るったり家具類その他の器物を損壊するなど,家庭内での行為を「家庭内暴力」という。不登校(登校拒否),不良行為などが並行して発現することもある。
〈物質常用〉
社会的規範から見て,成人が健康的に摂取している行為以外の,児童生徒が社会的規範を逸脱して行う喫煙,アルコール摂取(飲酒),有機溶剤(シンナー,トルエン,酢酸エチル,ガソリンなど)・接着剤吸引などの行為をいう。早期に発見されてやめる一過性のものと,身体の健康を害する依存性をもったものとがある。