研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -003/049page
〈性的問題〉
児童生徒が,年齢,おかれている状況などから考えて,性的に逸脱していると考えられる行為をいう。大別すると次のようになる。
1 不純異性交遊遊び的で,性欲求の快楽追求,充足を果たそうとする行為をいう。
2 強制わいせつ,強姦など相手の意志を無視して,性欲求の短絡的,衝動的充足を果たそうとする行為をいう。
3 売春行為性を手段媒介として,金銭的,物質的な利欲の充足をはかる行為をいう。
4 その他の性的逸脱行動上記1, 2, 3以外の性的に逸脱している行動をいう。
(3) 反社会的行動の実態
反社会的行動に限らず児童生徒の問題行動が確かに増えつつあり,大きな社会問題化しているのは周知のことである。教育の立場からいえば,何らかの形でこれらの実態をとらえ,それに基づき適切な対応策をたてるとともに,教育のあり方について問い直すことなどが必要である。ここでは身近にあるいくつかの資料から,児童生徒の反社会的行動のおおよその傾向等をとらえることにする。
さて,最初は,当教育センター教育相談部における来所相談の数と内容からみる実態である。昭和58年度の来所相談の延人数は1,712件で前年比304件の増であった。また,昭和59年12月末現在でも前年度同月比101件の増となっている。昭和58年度の来所相談の内容は,大別して, 1不登校(登校拒否)880件(51%), 2反社会的行動179件(10%), 3集団不適応159件(9%), 4その他494件(30%)の順となっている。
第2は,当教育センターの「教育相談講座」を受講した先生方の「事例研究」から把握する実態である。これは,中学校と高等学校の先生方の事例研究であるが,昭和58年度及び昭和59年度の受講者, 計122名のうち, 1反社会的行動53名(43%), 2不登校33名(27%), 3集団不適応23名(19%), 4その他13名(11%)であった。
このことについて,当教育センター教育相談部では,来所相談の数からは児童生徒の問題行動が増加の傾向にあること,その内容からは県教育センターのおかれている立場上どうしても不登校や集団不適応などの非社会的行動をもつ児童生徒の相談件数が多くなっていると考えている。そしてまた,教育相談講座の事例研究において,反社会的行動が第1位を占めているのは,短絡的であるかも知れないが,実際に学校では反社会的行動が最も多く発生し,それへの対策が緊急かつ重要な課題になっていることであろうと想像している。
第3に,県中央,会津,浜児童相談所の「業務概要」で発表されている資料にみる実態である。昭和58年度版によれば,総相談件数は2,642件で,その内容別構成は,心身障害1,362件(51.6%),健全育成536件(20.3%),非行421件(16.O%),養護269件(10.2%),その他51件(1.9勉)である。このうち,反社会的行動と非常に関連の深い非行の内容は,相談件数の多い順に,窃盗,不純異性交遊,家出・浮浪,不良交友,薬物所持,恐喝,怠学,物品持ち出し等である。
そして,更に県警察本部発行の昭和58年度版,「少年の補導及び保護の概況」を調べてみた。これによると,昭和57年度に県内で補導された少年(少女も含む)は,23,475人で,前年比768名の増である。それに加えて交通非行少年(道路交通法違反行為)が22,462名で,同じく前年比679名の増であった。この増加の傾向は,昨年度も今年度も続いているようである。補導された少年のうち,刑法犯少年は4,694人で,小学生506人,中学生1,927人,高校生1,438人であり,刑法犯少年のうち5人に2人が中学生という指摘もしている。
補導内容は,万引き,窃盗,けんか・粗暴,薬物乱用,性非行,深夜徘徊,無断外泊,家出,不健全娯楽,自殺,などの順で多様にわたっている。
児童生徒の反社会的行動については,それぞれ