研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -005/049page

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3 反社会的行動の発生を理解する手がかり

(1) 素因と誘因

児童生徒の問題行動が発生する要因としては,その最も基になる要因ー素因ーと,問題行動の直接の引き金になるー誘因ーとがある。この両者が互に関係し合って種々の複雑な問題行動が形成されると考えられる。

まず素因と考えられるものの第一は子供の性格であり,性格は問題行動の発生に深いかかわりを持つと同時に,どのような問題行動,すなわち反社会的行動の形をとるのか,非社会的行動の形をとるのかとも深くかかわってくる。

第二は親子関係で,児童生徒の性格形成に大きくかかわった,いわゆる性格形成の背景となった親子関係に着目する必要がある。

次に誘因であるが,これは素因と結びついて問題行動を起こすことで解決しようという機制をとるストレスを考えることができる。その中には当然現在の親子関係(家族関係)も含めて考える。

(2) 誘因としてのストレス

現代はストレスの多い時代であるといわれる。ストレスは,人間が何らかの復旧調整反応を起こす必要にせまられるような原因刺激を総称していうものであり,多くの場合不安を起こさせる原因刺激になっている。

不安は,その多くが,対象が明確でなく(M・ハイデガーは,不安の対象は無であると述べている)漢然としていて,時には身体的疾状(多くは自律神経の変調)や無力感を伴ったりするものである。

特に思春期の児童生徒は,感受性が強く,ストレスに対する耐性も未発達なために,自己の保持や存在,向上などがおびやかされると感じてしまうような不安一病的不安一をいだくことが多く,素因としての性格によっては,非常に深刻な問題へ発展することが多い。

図1 主なストレス
図1 主なストレス

・身体的要因:過労,睡眠不足,外傷,中毒,飢餓など・内部要因:幼児期の葛藤や心理的外傷,現実の心理的葛藤など・外部要因:自然環境,社会・文化状況,家庭・学校などでの人間関係など

(3) 反社会的行動発生のメカニズム

思春期の児童生徒が不安をいだくような状況は非常に多いものであるが,そのかなりの部分は,危険をさけたり,向上的な努力の原動力となるような不安一現実不安一であるが,その児童生徒のおかれている状況によっては,不適応行動という形をとって自我防衛をしなければならない場合が生じる。思春期の自我未熟な児童生徒ではこうした現象が多く認められ,その一つが反社会的行動という形であらわれていると考えることができる。

従って同様の不安があっても,児童生徒の素因によって,よりよい再適応の原動力になることもあれば,不適応行動の形をとることもあり,更に不適応行動についても種々の様式をとることがある。

図2 主な不安の防衛とその様式昇華など(再適応の原動力)
図2 主な不安の防衛とその様式昇華など(再適応の原動力)

1 身体化の方向

これは病的不安が身体症状に置き換えられてい


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