研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -007/049page

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  4 社会規範や社会習慣などの主体的理解のしかた,自己実現や向上への意欲などの実存的次元

 の4つの次元を,原則的にはこの順序に,しかも相互に関連づけながら,周生期から現在に至るまでの生育の過程に即して反社会的行動の背景を明らかにし,問題の所在を理解していくことが大切である。

 なお,これら4つの次元にわたって反社会的行動の背景を探るに当たっては,

  1 問題行動と結びついていると思われる事項をすべてとり上げること。

  2 科学性,合理性,客観性を必須の要件とすること。

 などに,十分に留意する必要がある。さらに,これらの背景の理解は,個々の対象に即して行われるものであるから,その個々の所属する集団における位置,問題意識,そして時間の経過による内的変化,身体的成長に伴う問題の変化にも十分な配慮を加えなければならない。

 そのためには,次に述べるような4つの次元における適切な資料の収集が必要である。

(2) 反社会的行動の背景を理解するための資料

 生物的次元

● 遺伝的負因
● 出生に関すること
  〈母親の問題〉
 ・ 出生前の母体の健康(事故,中毒,病気など)
 ・ 出生前の母親の情緒(安定,不安定など)
 ・ 分娩(熟産,早産,正常,異常など)
  〈本人の問題〉
 ・ 出生時の体重,産声,栄養の状況(授乳の方法,哺乳力,離乳など)
● 身体・生理
 ・ 脳障害
 ・ 身体的発達状況,身体的特徴
 ・ 運動・行動(多動,器用さなど)
 ・ 睡眠の状況
 ・ 食行動
 ・ 排泄の状況
 ・ 既往症,発症前の身体症状
 ・ 言葉の状態(器質,機能など)
● その他

 心理的次元

● 知的発達
 ・ 言語発達の状況(始語,言葉の数,明瞭さ)
 ・ 知能の状況
 ・ 学業の状況(成績,意欲,興味・関心出欠席,知能との相関など)
● 性格
 ・ 性格特性(劣等感,神経質,依存性,衝動性,積極性,自己顕示性など)
● 対人関係
 ・ 対人関係の特徴(依存,回避,孤立,攻撃,逃避など)
● 基本的生活習慣
● 運動・行動
 ・ 運動行動の特性(注意集中,常同行動強迫的行動など)
● 趣味・特技
● 習癖,嗜癖
● その他

 社会的次元

● 家庭環境
 ・ 家族構成(成員,年齢,職業など)
 ・ 家族関係(雰囲気,家族システム・カ動など)
 ・ 家族成員の性格と養育態度
 ・ 両親の教育に対する関心
 ・ 家族成員の健康状態

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