研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -010/049page

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  方法を決定する指針を得る。

 2 複数の指導援助者のだれであっても,共通の理解や認識をもって,指導援助にあたることができる方針である。

 3 反社会的行動をもつ児童生徒が自らの問題について理解し,改善する手がかりとなる。である。

 そしてさらに,複雑化,深刻化した問題行動には,その児童生徒の現象との関係を明確にしながら,生物的,心理的,社会的,実存的次元の四つの次元に資料を系統的に整理してその行為や行動を診断する「多次元診断」が有効である。これには,その問題と直接かかわりの少ない資料や不必要な資料を除外して,より精選された資料でその問題を診断したり,マトリックス化して,診断の精度を上げる利点もあるのである。

 (5) 指導仮説

 指導仮説とは,診断に基づき,指導援助の開始から終了までの指導援助の一切の見通しをたてることである。これを具体的に述べれば,まず指導援助の対象を明確にし,次にその問題行動を改善・解決するための具体目標と指導方針をたて,それらを達成するのに最も合理的で効果的な心理療法の選択や組み合わせ,そして評価の方法等を設定することである。

 これには反社会的行動を示している児童生徒のもつ条件,すなわち年齢,性,知能,環境等を考慮して,改善・解決にいたるまでの指導援助の日数(回数)や具体的な指導援助の手だてを本人あるいは親(保護者)や学校に伝達することも必要である。

 (6) 指導援助の順序

 1 インテーク面接(初回面接)

   これは,問題の確認をし,診断に必要な資料を収集する初回の面接である。必要に応じて諸検査を行う。一般に,児童生徒と親との面接を並行して別々に行う。

   このとき留意するのは,児童生徒と指導援助者との信頼関係をつくり,児童生徒が教育相談をうけて,自ら問題行動の改善に努カすることができるようにすることである。

 2 指導援助のための面接

   これは,指導仮説にしたがい,問題行動を改善・解決していくための面接である。面接にあたっては,心理療法の理論とそれに基づく技法を用いる。

   児童生徒のもつ問題の内容や性格によって,面接のおよその回数や期間を想定する。また原則として,児童生徒と親との面接を並行して進めるが,必要に応じて親子の合同面接等によって,家族全体にも働きかける。

   児童生徒と信頼関係を深めながら,指導援助者と児童生徒とが共に,具体的目標をもつて面接することができるよう留意する。

 3 関係機関との連携

   必要に応じて,学校,医療機関,児童相談所,警察等の関係機関と連携して指導援助にあたる。なお,原則として特に必要がある場合以外は,児童生徒及び親には連携については伏せておくようにする。

 (7) 指導援助の方法

 反社会的行動をもつ児童生徒は,一般に問題行動を改善しようとする意欲に乏しく,指導援助を受け入れにくい。そのため,何よりもまず指導援助者と児童生徒との信頼関係をつくりあげたのち各種の心理療法の理論とそれに基づく技法を用いて指導援助にあたるのが効果的である。

 なお,神経症が背景となっている反社会的行動の改善・解決の場合は,神経症の治療を優先する指導援助をする。

 さて,指導援助の方法を,「主な心理療法」の表(次頁)に示した。これらは,日ごろの教育相談において使用している主な心理療法である。


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