研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -011/049page
表 主な心理療法
心理療法名 ねらいと方法 留意点 カウンセリング 主に,言語的手段を用いて,心理的影響を与え,問題解決をはかる。 自分の言動へのふり返りをさせることや,社会生活のあり方を考えさせ,規範性や倫理観を育てる。 ー来談者中心カウンセリングー
自己一致した指導援助者が受容的,共感的に対応し,来談者が自分自身で目分の道をみつけ,自分の中に潜む可能性を探り出すよう援助する。・ 自由に感情表現をさせる雰囲気を提供する。 ー精神分析的カウンセリングー
幼少期の体験で無意識下に抑圧されたものを想起させ,その体験を克服させる。・ 退行を促進させる場の提供をする。また.感情転移や抵抗にふりまわされない。 ー支持的カウンセリングー
元気づけ,なぐさめ,示唆,説得,忠告などの技法を多用して,新しい,より適切な型の行動の学習を促進させる。・ 信頼関係をそこねず,成就の可能性があるとみなしうる範囲内で行う。 ー実存的カウンセリングー
人生観,世界観を発見させる。・ 指導援助者が一人の人間として自分を表現する。 ー折衷的カウンセリングー
上述のカウンセリングを必要に応じて使いわける。・ 意図的にカウンセリングを使いわける。なお,初期の段階では来談者中心的で,その後精神分析的,支持的,実存的カウンセリングが望ましい。
論理療法 行動の前提になっている,事実にもとづかないことや,論理的必然性のないことを説得して修正をはかる。 人生観や社会観などで非論理的な考えがあれば,それを説得して修正させ,人生に対し前向きの姿勢を持たせる。例えば「私には金がない。 だから盗った。A 」 Aの部分を説得して."しかし,飛んする" "だから,家の人に相談する"に修正させる。
自立訓練法 一連の体系化された言語(気持が落着いている。右手,左手,右脚,左脚,両うで,両脚が重たい。また,同様に温かいなど)を頭の中でつぶやかせて自己暗示をはかり,段階的に心身の改善をする。 不安を柔らげることと合わせて,イメージトレーニングにより,学校などでのトラブル場面で自己を抑制できるようにさせる。なお.指導援助者が十分に修得して体験しておくことと,精神症状や身体症状を有する者については,専門医と協議の上で実施の可否を検討する。
遊戯療法 玩具や遊具などで,子供と一一緒に遊びながら話し合い,心理的な不安を除く。 必要に応じて,制限的な遊びや自由な遊びをさせて建設的な行動を身につけさせ,さらに自律心を養う。また,身体的危険がないよう配慮する。
運動療法 運動を通して,人間関係のあり方や社会性を養う。 試合の中でルールを厳守させて,規範性を身につける動機づけをはかる。なお,運動の種類は,本人に選択させることと,運動が苦手な者に対しては強制はしない。また,始めから試合はしない。