研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -013/049page
(8) 指導援助の方法(心理療法)と留意点
ー生物的次元ー
脳の器質的な問題,神経症や精神疾患等の疑いがあったり,身体症状のある場合等,医学的な判断が必要と考えられる時は,まず専門医の診察を受けさせる。その結果,当面医学的治療が優先する場合は,医療機関に治療を委ねる。
医学的治療と心理的な指導援助を並行的に進める場合や医学的治療を必要としない場合は,カウンセリングを中心に自律訓練法などを行わせる。
ー心理的次元ー
反社会的行動をもつ児童生徒が現在かかえている性格や情緒的な問題に対して,カウンセリングを中心に,遊戯療法,箱庭療法,行動療法,ロール・プレイング,交流分析,ゲシュタルト療法などを行う。
なお,性格検査等の心理テストを必要に応じて選択し実施する。親に対しても同様の指導援助や必要な心理検査を行う。
ー社会的次元ー
家庭及び学校に対して,次の働きかけや指導援助を行う。
1 家庭に対して
児童生徒への接し方,夫婦のあり方,家庭の雰囲気・そして親の性格等の改善について,環境調整を含めて親にカウンセリングなどを行う。
2 学校に対して
反社会的行動をもつ児童生徒への望ましいかかわり方,友人関係の調整,そして学校内外の諸集団に対する指導等,環境調整を依頼する。
ー実存的次元ー
児童生徒,親,及び教師に対して,次の指導援助や指導援助の依頼をする。
1 児童生徒に対して
自らの将来を見つめさせることや自分自身の存在価値に気づかせ,またそれを深めるために,カウンセリングを中心に,ロール・プレイング,読書療法,論理療法等を行う。
2 親,教師に対して
親及び教師に対し,さりげない姿で,人生観にふれる話題等の提供を依頼する。また,両親には,確固たる生き方ができるようにするためのカウンセリングをする。
(9) 指導援助の終了とアフターケア
指導援助の終了は,児童生徒の問題行動がみられなくなったことはもちろんのこと,自我の成長,環境への適応状況,社会の規範あるいは慣行への態度や認識度,親への接近度,そして所属集団及び家庭環境等の改善等を十分勘案して判断する。また,問題行動の改善に努カしている児童生徒自身が,自らの意志で指導援助者を必要としない旨を告げることができた時も,一応指導援助の終了とする。
教育相談の関係が終了後しばらくの期間,その児童生徒の状況を把握しておくようにする。そして,児童生徒のもつ種々の条件を配慮しながら,必要に応じて,適宜必要な助言指導を行う。
なお,次に事例の理解をより深めるために,事例に用いた心理検査の簡単な説明を付した。