研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -019/049page
から,一応面接相談を打ち切ることにした。
2 本人
● 運動をするートランポリンで,ルールを決め,跳ぶ目標回数を定めて粘り強く挑戦した。
(6) 第7回面接ー並行面接ー
1 両親
● 5か月ぶりに盗みが再発したことについて
父 「しばらく問題を起こさなかったものだから,つい,子供を放ったらかしにしてて…。」
母 「学年末から学年始めにかけ,学習成績のことで,つい,兄や姉と比べ,本人を責めたり,親せきの人にぐちをこぼしたりしてしまった…。そのころから,以前のように,反抗的で,乱暴になり,態度もふてくされてきて…ついに,盗みがでてしまいました…。」「ところが父が家に帰って,子供と遊んだり,一緒に仕事をしているときは,本人はとてもすなおで明るく振舞っており,お金を盗むなんて,とても考えられない…。」
● 盗みをし,先生に注意された直後の下校途中,友人宅から,またお金をとったことについて
父 「大金を盗み,神社の境内に隠して家に戻り,『ぼくは取ってない…。家出をする。』と書き置きをして家出した。なんと,家から10q余の道を歩いて私(父)の勤め先まで来たんです。事務所の裏口にすくんでいて,私の顔を見るなり,ワッと泣いて私の胸にとびこんで来たんです。ジーンと胸にきました。」
母 「父に会いたかったのね…。本当は,私も父が帰宅すると,ホッとして気が休まる…父が家から通勤できるといいのに…。」
父 「通勤のこと,子供へのかかわり方…これを考えなおし,改善の努力をしてみるよ。」
2 本人
● 「母の財布,親せきの家,友達の家,車の中などからお金を取った。映画を見たかった…ひとりでに手が出る…。取った後はビクビク…。」
● 運動をするーバドミントン,サッカー,トランポリンヘと,次々変って落ち着かない。
(7) 第8回面接ー並行面接ー
1 両親
● 家族への父のかかわり方について
父 「家から通勤するようにした。…監視や監督のためではなく,これまでに家を留守にしたつぐないをするために,です。子供には,ときには厳として生きる父親の姿を見せなければ…と思っています。私が通勤するようになってからは,お母さんも優しくなり,子供も落ち着いてきました。本人は毎タ,駅まで私を迎えに来てくれます。かわいいもんです。」
母 「本人は,今は全く問題をおこしていません。私もホントに安心しました。
● 「これからは私が責任をもつ」との父親の決意が語られたことから,面接相談を打ち切った。
2 本人
● 「サッカークラブで夕方遅くまで練習している。とっても気持ちがせいせいしている。」
● 運動をするートランポリンで,ルールを決め,跳ぶ目標回数を定めて,粘り強く挑戦した。
8. 考察
父親が自宅から通勤するようになってからは,特に母親が安定してきた。大らかな父,優しくなった母の温かいかかわりにより,本人の情緒が安定し,行動が落ち着いてきたものと思われる。
父母が,公平で,信頼感を基に自主性,自律性を大切にして養育に当たることにより,本人の情緒は更に安定し,伸び伸びしてしかも自主的,自律的な生活態度がはぐくまれてきたように思われる。
ルールを決めて運動をしたことや,約束を決めて親子共にけじめのある生活をする努力をしていることなどにより,本人は,サッカーや犬の世話,父の退勤の出迎えなどを毎日続け,また,外出からの帰宅時刻を守る,盗みをしないなど,耐性や規範性が徐々に育ってきているものと思われる。