研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -020/049page
事 例 2 (小学校 2)
親の財布からたびたび盗みをした事例
1. 主訴 盗み
2. 対象 小学校4年 女子
3. 問題の概要
● 小学校4年の1学期に身体のだるさを訴えたので,医師の診断を受けたら,「若年性高血圧」と診断された。食事制限を主治療に入院加療をしていた。その間に盗み食いや両親の財布から金を盗むようになった。
● その後,退院してからも両親の財布から金銭を盗むようになり,問いただされると嘘に嘘を重ねるようなことが続いている。
4. 資料
ー生物的次元ー
● 既往症
乳幼児期とも身体症状は特になかった。
● 運動・行動
低学年時に,敏捷性に欠け,よくころぷことが多かった。
ー心理的次元ー
● 知的発達
集団式知能検査偏査値は46。学業成績は,低学年では最下位グループであったが,4年生になってやゝ向上してきた。
● 性格傾向
幼児期までは,人見知りをすることもなくおおらかであった。
親の財布からお金を盗むようになってから口数が少なくなり,おどおどするようになった。また口答えをするなど,反抗的な態度がみられるようになった。
● 対人関係
幼児期は,近所の子との遊びが多く,母親と遊ぷことがほとんどなかった。家の都合で,他家に預けられたり,母親が不在がちだったりしていたので,母親に対する愛情に飢えている。母親も本人を扱いかねている。
授業では,学習中の手遊びが多く,学習の障害になるとともに級友から孤立することが夢かった。また,告げ口をすることで級友からいやがられたり,いじめられたりしていた。
学校に菓子や小物などを持ってきて,他の子にくれたりして,級友の目を自分に引きつけようとするところがあった。「ウソ」をつくことも多く,その都度担任の指導を受けているが,改善されていない。
● 基本的生活習慣
整理整とんや清潔さなどあまり身についていない。
● 習癖
小2のころ「つめかみ」があったが,現在はみられない。
● バウム・テスト(下図)
2回ともお金を描いており金銭への執着がみられる。
ー社会的次元ー
● 家族構成